
「資産運用を始めたいと思っています。いくらから始めるのが良いのでしょうか?」
いくらから始めるべきかは人それぞれ違います。
資産運用は長期使わないお金で始めるのが基本となり、その金額は人によって違うからです。
仮に同じ年収、貯蓄額であっても家族構成や運用目的、将来のライフプランによってお金の使い方が変わってきます。
つまり、自分には長期使わないお金がいくらあるのかがわかれば、いくらから始めるべきかの答えが出ます。
この記事では、資産運用を始める際のお金の決め方をFPの視点から解説します。
資産運用をいくらから始めるか悩んでいる方は、ぜひ最後までお読みください。
この記事でわかる事
- 長期使わないお金が資産運用に向く理由
- 資産運用に回しても良い金額の決め方
- 資産運用を始める前によくある質問
資産運用は長期使わない余裕資金から始めよう
資産運用は長期使わないお金で始めましょう。
なぜなら、資産運用は長期で行うほうがうまくいきやすいからです。
実際に、1年や5年の短期運用では、始める時期によっては元本割れになっていたこともありますが、10年以上の長期運用では、どの時期に運用を始めても元本割れになっていなかったというデータがあります。
下記のグラフは1989年1月末~2019年6月末の期間で4つの資産(※)を均等に配分した場合の保有期間別年率リターンを表しています。

平均リターンは左から、
1年保有:最高で39%、最低で-30%
5年保有:最高で13%、最低で-6%
10年保有:最高で8%、最低でも0%
15年以上保有:最高で12%最低で2%
となっています。
つまり、過去のデータでは、10年以上の保有では、元本割れはしなかったという結果を示しています。
4資産の内訳 ※均等に配分し月次リバランスを行う
【外国株式】MSCIコクサイ・インデックス(配当込み、円換算ベース)
【国内株式】TOPIX(配当込み)
【外国債券】FTSE世界国債インデックス(除く日本、円ベース)
【国内債券】NOMURA-BPI総合
このように、資産運用は長期で続けることでうまくいく可能性が高くなります。
最低でも10年以上は長期使わないお金で始めることをおすすめします。
私はいくらから始めれば良い?資産運用にまわすべき金額の決め方
前章で解説した通り、長期使わないお金が資産運用に向くということがわかりました。
しかし、自分の資産のうち長期使わないお金がいくらなのかわからないという方も多いです。
私たちファイナンシャルプランナーは、長期間使わず、資産運用に回しても良い金額を決める時に必ず行う手順があります。
この章では、具体的に資産運用に回しても良い金額の決め方を3ステップで紹介していきます。
ステップ1:現状の家計を把握する
まずは、現在の家計の収支と貯蓄を把握しましょう。
(家計簿を付けている方など、ある程度ご自身の貯蓄や収支について把握できている方は次のステップに進んで問題ありません。)
家計の現状を把握しないと資産運用に回しても良い具体的な金額は決まりません。
やり方は簡単で、以下の2つについて確認していきます。
①収入(年間の収支)
確認方法
毎月(毎年)いくら入ってきて、いくら出ていって、余っている金額はいくらなのかを洗い出しする。
このうち余っている金額が、資産運用に向く可能性のある金額になります。
②貯蓄残高
確認方法
普通預金、定期預金、財形貯蓄など現在の貯蓄残高の合計がいくらなのかを確認する。
この中から長期で使わない、資産運用に向く可能性のある金額を見つけていきます。
FPからのアドバイス
1度家計を把握することで無駄な部分が見つかる事も多く、想像したよりも運用に回せる金額が増えることも多々あります。
ステップ2:お金を時間で振り分けする
家計を把握したら、お金を時間で振り分けましょう。
この作業により、先に解説した、長期で使わない、資産運用に向くお金を把握できます。
使うまでの時間で3つに振り分けます。

ここでは貯蓄があるAさんと貯蓄が少ないBさんの家計を例に、「収入」と「貯蓄」両方のお金を3つに振り分けしてみましょう。
貯蓄があるAさんの例
収入:手取り額年間400万円(年収500万円)
貯蓄:普通預金300万円/定期預金200万円
年間支出:300万円
収入の振り分け
手取り400万円を振り分けします。
1年以内
→ 生活費として年間300万円(毎月25万円)
1~10年
→ 5年後の車買い替え費用(予算300万円)のための貯金として年間60万円(毎月5万円)
10年以上先
→ 余り年間40万円(毎月約3.3万円)
貯蓄の振り分け
普通預金と定期預金の合計500万円を振り分けします。
1年以内
→ 生活防衛費200万円(手取り半年分)
1~10年
→ 来年の海外旅行費用100万円
10年以上先
→ 余り200万円
貯蓄の少ないBさん
収入:手取り額年間240万円(年収300万円)
貯蓄:普通預金30万円
年間支出:180万円
収入の振り分け
手取り240万円を振り分けします。
1年以内
→ 生活費として年間180万円(毎月15万円)
1~10年
→ 普通預金を手取り3か月分~6か月分までに増やすための貯金として年間36万円(毎月3万円)
10年以上先
→ 余り年間24万円(毎月2万円)
貯蓄の振り分け
普通預金の30万円を振り分けします。
1年以内
→ 生活防衛費30万円
1~10年
→ なし
10年以上先
→ なし
このようにお金の振り分けをしましょう。
次でいよいよ資産運用にまわせる金額が決まります。
ステップ3:「10年以上先」に振り分けたお金が資産運用にまわせる金額
「10年以上先」に振り分けられたお金が資産運用に回せる金額となります。
例えば、AさんとBさんが資産運用に回せる金額は以下のようになります。
Aさん
毎月のお給料から3.3万円(年間40万円)
現在の貯蓄から200万円
Bさん
毎月のお給料から2万円(年間24万円)
現在の貯蓄からは運用に回さない
このような手順でお金を整理することで、長期使わないお金がはっきりし、資産運用に回しても良い金額が具体的になります。
Q&A 資産運用を始めるときによくある質問
資産運用を始めるときによくある質問とその回答を6つご紹介します。
Q1:資産運用は最低いくらから始められますか?
A:資産運用の方法により最低金額は異なりますが、100円~1万円程度で始められるものもあります。
代表的な資産運用の最低購入金額

※購入する証券会社によっても最低金額や取り扱い商品が変わります。
例えば、100円から投資信託が購入できる証券会社とできない証券会社があります。
Q2:貯金のうち何%を資産運用にまわすべきですか?
A:投資に回せる割合は人それぞれ異なるため、◯%と表現することは難しいです。
年齢や家族構成、収入や資産状況によって、投資に回せる資金や目的も異なります。
前章で紹介した手順通りにお金の振り分けをしてくと、自分にベストな投資割合がわかります。
一人で考えるのが難しい場合はファイナンシャルプランナーに相談するのもおすすめです。
Q3:初めて資産運用をします。100万円の余裕資金がありますが初心者なので積立の方が良いですか?
A:長期的にみると右肩上昇するような値動きのもので運用するのであれば、積立よりも一括投資のほうが高リターンを目指せます。
積立投資は少しずつしか投資に回らないのでリターンも少なくなりがちです。
例えば、年率7%のリターンで10年間運用できた場合で一括投資と積立投資を比較すると以下のようになります。
■一括投資のシミュレーション
100万円を一括投資
→10年後は約200万円
■積立投資のシミュレーション
100万円を毎月8400円の積立投資
→10年後は約145万円
一括投資の方は、10年で2倍に資産を増やしているのに対して、積立投資は1.5倍程度しか増えていません。(あくまでもシミュレーションです。)
つまり、一括投資できる資金があるのに、それを積立投資にしてしまうと、大きく増やすチャンスを逃してしまう可能性があります。(積立に回っていないお金は預貯金で眠ることになるため)
Q4:積立と一括どちらから始める方が良いですか?
A:既に手元にある貯蓄を資産運用に回す場合は一括投資が向いています。
お給料などの収入から資産運用に回す場合は積立投資を選択しましょう。
Q5:少額で資産運用を始めても意味ないですか?
A:預金の金利以上で資産運用が出来れば、少額でも預金に置いておくより資産は増えるので意味はあります。
資産運用を成功させるには、投資に回す金額も大事ですが「時間(長期運用)」も大切です。
少額でも良いので、出来る金額で早くから、長期の目標を持って資産運用を始めることをおすすめします。
Q6:初心者が長期投資をするのにおすすめの商品はありますか?
A:初心者の方は、投資信託や貯蓄型保険で運用を始めるのがおすすめです。
この2つの商品は、運用会社や保険会社に運用をお任せすることが出来るからです。
自分で運用をする場合、日々の値動きやチャートのチェック、売買の判断と実行、そのための情報収集や知識の習得など、全て自分自身で行う必要があります。
投資信託や貯蓄型保険というのは、これらのことを運用会社と保険会社が行ってくれます。
ただし、どちらの商品も種類がたくさんあります。自分に合った商品が選べないという方はFPに相談しましょう。
まとめ
資産運用はいくらから始めるべきか、その金額は人それぞれ違います。
現状の家計を把握し、使う時間でお金を振り分けることで、具体的に資産運用に回すべきお金がいくらなのかがわかります。
少し手間に感じる方や心配な方はファイナンシャルプランナーに相談することもおすすめです。
