生活防衛資金とは?いくら必要かを独身・夫婦・家族別にシミュレーションで解説

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生活防衛資金とは?いくら必要かを独身・夫婦・家族別にシミュレーションで解説
2025.12.12

生活防衛資金とは?いくら必要かを独身・夫婦・家族別にシミュレーションで解説

生活防衛資金って何のこと?いくら準備しないといけないの?と疑問に思っていませんか。

この記事では、そんなあなたの疑問を解決します。生活防衛資金の基本的な意味から、あなたの家族構成や働き方に合わせた具体的な目標金額のシミュレーションまでをわかりやすく解説します。

さらに、初心者でも無理なく貯めるための具体的な方法4選もご紹介。この記事を読めば、お金の不安を解消し、安心して資産形成の第一歩を踏み出せるはずです。

この記事を書いたFP
生活防衛資金とは?いくら必要かを独身・夫婦・家族別にシミュレーションで解説
古賀 孝夫
古賀 孝夫
難しい金融の仕組みや、低金利時代の資産運用について分かりやすくお伝えします!

目次

1:生活防衛資金とは、万一の事態に備えるための「守りのお金」

生活防衛資金とは、収入が減ったり急な出費が必要になったりしたときに、あなたの生活を守るためのお金です。

例えば、会社を自己都合で退職して転職活動をする場合、雇用保険の失業給付金を受け取るまでには約1ヶ月の待機期間があります。生活防衛資金があれば、この収入のない期間も安心して生活を維持でき、じっくりと自分に合った仕事を探せます。

まずは足元を固める「守りのお金」として、生活防衛資金を準備することが何よりも大切です。


生活防衛資金が“いらない”は本当?—よくある誤解

「生活防衛資金はいらない」といった意見を聞いたことがあるかもしれません。しかし、これは非常にリスクの高い誤解であり、特にクレジットカードのキャッシング枠やカードローンでの代用は危険な考え方です。

カードローンなどは年率15%前後という高い金利がかかります。緊急時に利用すると、その後の利息返済が家計をさらに圧迫し、状況を悪化させる悪循環に陥る可能性があります。

生活防衛資金の価値は、コストやリスクをかけずに「いつでも使えるお金がそこにある」という安心なのです。


2:【ケース別】生活防衛資金はいくら必要?金額の目安をシミュレーション

この章では、総務省が公表している公的な統計データ「家計調査」を参考に、家族の状況ごとに必要な生活防衛資金の目安をシミュレーションしていきます。

ご自身の現在の状況と照らし合わせながら、目標額のイメージをつかんでみましょう。

2-1:基本は「毎月の生活費」の3ヶ月〜1年分

生活防衛資金の必要額は、一律で「〇〇円」と決まっているわけではありません。計算の基準になるのは、あなた自身の「毎月の生活費」です。

一般的には、毎月の生活費の3ヶ月から1年分が目安とされています。収入が途絶えた際、公的な支援が始まるまでの期間や、生活を立て直すのに必要な期間を無理なくカバーしなければなりません。

【一般的な目安】

会社員の場合
生活費の3ヶ月〜6ヶ月分が標準的な目標

自営業・フリーランスの場合
収入が変動しやすいため、より慎重に生活費の6ヶ月〜1年分、あるいはそれ以上を準備しておくと安心

2-2:独身・一人暮らしの場合

独身・一人暮らしの方は、頼れる収入源が自分自身しかいないため、万一の時の備えが特に重要です。

目安期間

生活費の3ヶ月〜6ヶ月分

生活費の平均額

約17万円/月(※参考:総務省 2024年「家計調査」

目標額のシミュレーション

約51万円 〜 102万円

家賃や光熱費などを一人で負担するため、複数人世帯と比べて一人当たりの生活コストは割高になる傾向があります。まずは最低ラインの50万円を目標に、計画的に準備を始めましょう。

2-3:夫婦二人の場合

夫婦二人暮らしの場合は、「共働き」か「片働き」かという働き方の違いが目標額を決めるポイントになります。

目安期間

生活費の3ヶ月〜6ヶ月分

生活費の平均額

約27万円/月(※参考:総務省 2024年「家計調査」)

目標額のシミュレーション

約81万円 〜 162万円


【働き方別の考え方】

共働き世帯
収入源が2つありリスクが分散されているため、3ヶ月分に近い金額でも対応しやすい

片働き世帯
収入源が一つに集中しているため、6ヶ月分以上の手厚い準備をしておくと安心


2-4:子どもがいる世帯の場合(3人・4人家族)

お子さんがいる世帯では、教育費など簡単には削れない支出が増えるため、他の世帯よりも手厚い準備が必要です。

目安期間

生活費の6ヶ月〜1年分

生活費の平均額
(※参考:総務省 2024年「家計調査」)
3人家族:約31万円/月
4人家族:約34万円/月

目標額のシミュレーション
3人家族:約186万円 〜 372万円
4人家族:約204万円 〜 408万円

万一の事態で、お子さんの教育機会や成長環境が損なわれることがないよう、家族の未来を守るための資金として計画的に準備を進めましょう。

3:初心者でも挫折しない!生活防衛資金の効率的な貯め方4選

目標額がイメージできたら、次はいよいよ実践です。「貯金は苦手で…」という方でも挫折しにくい、効率的で長続きする4つの方法を紹介します。

できることからひとつずつ、着実に進めていきましょう。

3-1:すぐに引き出せない「専用口座」を作る

効果的な貯め方のひとつは、普段使いのお金と生活防衛資金を物理的に分けてしまうことです。そのために、まずは「生活防衛資金専用の口座」を作りましょう。

給与が振り込まれたり、クレジットカードの引き落としに使ったりしているメインの口座とは別に、専用の口座を用意します。これにより、お金の目的が明確になり、「あるからつい使ってしまう」という衝動的な支出を防げます。

【ポイント】

  • 給与振込口座とは別の銀行で口座を開設するのがおすすめ
  • 一部のネット銀行などが提供する「目的別口座」のサービスも、資金を仕分けるのに便利
  • 専用口座のキャッシュカードは普段持ち歩かないようにするなど、あえて引き出しにくくする工夫も効果がある

3-2:給料日に自動で「先取り貯蓄」する仕組みを作る

「月末にお金が余ったら貯金しよう」という考え方では、なかなかお金は貯まりません。大切なのは、給料が入ったらまず貯蓄分を確保し、残りのお金で生活する「先取り貯蓄」という考え方です。

この方法の最大のメリットは、一度設定してしまえば、あとは自動でお金が貯まっていく点です。自分の意志の力に頼る必要がないため、貯金が苦手な人でも失敗しにくい方法です。

【具体的な方法】

自動積立定期預金
銀行のサービスを利用し、毎月の給料日に決まった額を自動で専用口座に振り替える設定をする

財形貯蓄制度
勤務先に制度があれば、給与から天引きすることも可能手元にお金が入る前に貯蓄が完了するため、強制力のある方法のひとつ

3-3:固定費を見直して毎月の支出を減らす

毎月の支出、特に「固定費」を見直すことで、貯蓄のペースを加速させることができます。

食費や交際費といった変動費の節約は日々の努力が必要です。しかし、固定費は一度見直すだけで、その節約効果が毎月ずっと続きます。

【見直すべき固定費の例】

  • 通信費:マートフォンの料金プランを見直す
    • 格安SIMに乗り換える
  • 保険料:保障内容が過剰でないか確認する
    • 不要なオプションが付いていないか確認する
  • 住居費:賃貸の場合:更新時に家賃交渉を試みる
    • 住宅ローンの場合:借り換えを検討する
  • サブスクリプション:利用頻度の低い動画配信サービスやアプリなどを解約する

3-4:副業などで収入アップを目指す

支出を減らす努力と並行して、収入そのものを増やすことも、目標達成までの期間を短縮するための手段のひとつです。

ただし、副業を始める際には次のような点に注意しましょう。

【副業を始める際の注意点】

  • 健康管理:本業に支障が出ないよう、労働時間や体調の管理を自分で行う必要がある
  • 税金の手続き:副業での所得(収入から経費を引いた額)が年間で20万円を超えた場合は、自分で確定申告を行う必要がある

4:貯めたお金はどこに置く?生活防衛資金の預け先2つの条件

生活防衛資金を貯める場所は、どこでも良いわけではありません。その大切な役割を確実に果たしてもらうためには、預け先がいくつかの重要な条件を満たしている必要があります。

押さえておきたい条件は、「安全性」と「流動性」の2つです。

4-1:元本が保証されているか(安全性)

生活防衛資金の預け先を選ぶうえで、優先すべき条件は「安全性」、つまり預けたお金の元本が保証されていることです。

日本の預貯金は、「ペイオフ(預金保険制度)」という仕組みによって守られています。これは、万が一金融機関が破綻してしまった場合でも、預金者の資産を一定額まで保護してくれる制度です。

  • ペイオフで保護される範囲:1つの金融機関につき、預金者1人あたり元本1,000万円までと、その利息

この制度があるため、銀行の普通預金や定期預金に預けていれば、基本的にお金がなくなる心配はありません。もし1,000万円を超える現金を準備する場合は、複数の金融機関に口座を分けて預けることで、全額を保護の対象にできます。

4-2:必要な時にすぐ引き出せるか(流動性)

安全性の次に重要な条件は「流動性」、つまり必要な時にすぐに現金として引き出せることです。緊急事態はいつ起こるか分からないため、お金へのアクセスに時間がかかったり、ペナルティが発生したりするようでは困ります。

この点で優れているのが「普通預金」です。ATMなどを通じて、いつでも自由にお金を引き出せます。

「定期預金」は普通預金よりも金利が少し高いですが、原則として満期まで引き出せません。途中で解約すると金利が大幅に下がってしまうため、生活防衛資金のような、いつ必要になるか分からないお金の預け先としては、普通預金の方が適しているといえます。

5:おすすめの預け先としてNISAが向かない理由

一方で、資産形成の手段として人気の高いNISAは、生活防衛資金の置き場所としては向いていません。その理由は次の3つです。

1. 元本保証がない

NISAで扱う投資信託などの金融商品は、市場の動きによって価値が変動します。お金が必要になったタイミングで暴落していると、預けた金額よりも少ない額しか引き出せない「元本割れ」のリスクがあります。

2. 目的が違う

NISAは、長期的な視点で資産を育てていくための制度です。短期的な安定性を求める生活防衛資金の目的とは、根本的に合致しません。

3. 税制上の不利な点

NISA口座で発生した損失は、他の課税口座で出た利益と相殺する「損益通算」ができません。

資産は、その役割に応じて場所を分けることが大切です。生活防衛資金という「守りのお金」は、リスクのない預金口座で確実に守りましょう。

6:生活防衛資金が貯まったら、NISAなどを活用した「攻めのお金」を育てよう

生活防衛資金は、不測の事態から暮らしを守るためのお金です。この「守りのお金」が貯まったら、次のステップに進みましょう。つまり、将来のためにお金を積極的に増やしていく「攻めのお金」を育てることです。

ここでは、初心者の方におすすめの代表的な方法を紹介します。


【攻めのお金を育てる方法】

  • 新NISA(ニーサ):個人の資産形成を応援するための税制優遇制度
  • iDeCo(イデコ・個人型確定拠出年金):自分で掛金を拠出して運用する私的年金制度

これまで準備してきた生活防衛資金があるからこそ、NISAなどを活用した投資にも安心して挑戦できるのです。ご自身の目的やリスク許容度に合った方法で、次の一歩を踏み出しましょう。

7:まとめ

今回は、資産運用を始める前に不可欠な生活防衛資金について解説しました。

この記事でお伝えしたように、生活防衛資金は万一の事態に備える「守りのお金」です。ご自身の状況に合わせて生活費の3ヶ月から1年分を目安に、「先取り貯蓄」や「固定費の見直し」といった効率的な方法で準備を進めていきましょう。

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