時短勤務の給与はいくら減る?実際の計算方法と社会保険料で損をしない方法を解説

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時短勤務の給与はいくら減る?実際の計算方法と社会保険料で損をしない方法を解説

時短勤務の給与はいくら減る?実際の計算方法と社会保険料で損をしない方法を解説

育児や介護を理由に時短勤務を考えているけれど、「給与って、実際いくら減ってしまうんだろう?」「手取りが減って、家計は大丈夫かな…」そんな不安を感じていませんか?

この記事では、時短勤務になった場合の給与計算方法と、それに伴う社会保険料の変動について解説します。さらに、損をしないための社会保険料の手続きや、「育児時短就業給付」、会社独自の補助金なども紹介していきます。

お金の漠然とした不安を解消し、安心して仕事と家庭を両立させるための第一歩を踏み出しましょう。

目次

時短勤務の給与計算前に知っておくべき基本を解説

時短勤務は「育児・介護休業法」という法律で定められた、働く人の大切な権利です。誰でも利用できるわけではなく、対象者や利用できる期間が決まっています。

参照:厚生労働省|短時間勤務等の措置


【時短勤務のおもなルール】

  1. 対象者:育児や介護を理由とする労働者
  2. 利用できる期間
    育児の場合:原則として、子どもが3歳になるまで
    介護の場合:対象となる家族1人につき、3年の間で2回以上利用可能

法律で認められた権利なので、自身がこの条件に当てはまるかどうかを確認しましょう。

【簡単シミュレーション】時短勤務の給与計算方法を3ステップで解説

ここでは、月収30万円で働く人をモデルに、具体的な数字を使いながらシミュレーション形式で解説していきます。

計算は、次の3ステップです。

  1. 基本給
  2. 賞与・ボーナス
  3. 各種手当

自身の給与明細と照らし合わせることで、時短勤務後の手取り額がかなり正確に予測できるはずです。

ステップ1:【基本給】の計算方法|月収30万円のモデルケース

本給は、働いた時間に応じて減額されるのが一般的です。なぜなら、多くの会社では「働いていない時間分のお給料は支払わない」という「ノーワーク・ノーペイの原則」が採用されているからです。

基本的な計算式は以下のようになります。

基本給 ×(時短勤務での1日の実労働時間 ÷ 元々の1日の所定労働時間)

例えば、基本給30万円で1日8時間勤務の人が、6時間の時短勤務になった場合で考えてみましょう。

30万円 ×(6時間 ÷ 8時間)= 22.5万円

となり、基本給は7.5万円減の22.5万円です。

ステップ2:【賞与・ボーナス】の計算方法

基本給が減るとなると、次に気になるのが賞与(ボーナス)。こちらも、基本給に連動して減額されるケースが多いです。

賞与の計算方法は法律で決まっているわけではなく、それぞれの会社の就業規則や賃金規程によって定められています。多くの企業では「基本給の〇ヶ月分」という形で支給額を決めているため、時短勤務で基本給が下がると、その分賞与も少なくなるのです。

例えば、賞与が「基本給の2ヶ月分」と定められている会社の場合、先ほどのモデルケースで見てみると、

フルタイム時:30万円 × 2ヶ月 = 60万円
時短勤務時:22.5万円 × 2ヶ月 = 45万円

となり、賞与にも差が出てきます。

時短勤務をしたことだけを理由に賞与をゼロにするような極端な扱いは「不利益取扱い」と見なされるおそれもあります。まずは自身の会社の就業規則を確認してみることが大切です。

ステップ3:【各種手当(残業代など)】の計算方法

給与明細を見ると、基本給以外にも様々な手当があります。これらの手当は、減額されるものと、されないものに分かれます。

住宅手当や役職手当のように、労働時間とは関係なく支払われるものは、時短勤務になっても金額が変わらないことが一般的です。一方で、通勤手当(1ヶ月の出勤日数で変動する場合)や皆勤手当などは、勤務状況の変化によって減額される可能性があります。

また、時短勤務でも残業代は支払われますが、少し注意が必要です。

例えば6時間勤務の人が1時間残業しても、法律で定められた8時間を超えていないため「法内残業」となり、割増賃金(25%以上)がつかない場合があります。8時間を超えた分は、もちろん割増賃金の対象です。

給与以上に重要!社会保険料の計算と知っておくべき手続き

時短勤務で給与が減ると、そこから税金や社会保険料が引かれるので、手取りはさらに少なくなってしまう…と思っていませんか?

実は、給与とセットで考えるべき「社会保険料」については、きちんと手続きをすることで負担を軽くできる重要な制度が存在します。

この章では、社会保険料を安くするための手続き、その手続きの注意点、そして多くの人が心配する「将来の年金」への影響について詳しく解説します。

時短勤務で社会保険料は安くなる?「育児休業等終了時報酬月額変更届」を解説

育児が理由の時短勤務であれば、手続きをすることで社会保険料(健康保険料・厚生年金保険料)を安くできます。そのために必要なのが「育児休業等終了時報酬月額変更届」という手続きです。

通常、私たちの社会保険料は、毎年4月〜6月の給与額を基に決定され、その年の9月から1年間は給与が変動しても保険料は変わりません。しかし、育児休業から復帰して時短勤務になり給与が下がった場合、この特例を使うことで、次の定時決定を待たずに、下がった後の給与額に見合った社会保険料にすぐに見直してもらえるのです。

この制度は、3歳未満の子どもを養育するために育児休業から復帰した人が対象になります。

参照:日本年金機構|育児休業等終了時報酬月額変更届の提出

手続きをしないと損!注意点と申請方法

この社会保険料の見直しは、自分から行動しない限り、自動的には行われません。従業員本人が会社に申し出て、会社を通じて年金事務所や健康保険組合に届け出る必要があります。

もしこの手続きを忘れてしまうと、どうなるでしょうか。時短勤務で給与が下がっているにもかかわらず、育休前の高い給与を基準にした社会保険料が天引きされ続け、手取り額が想定以上に減ってしまう事態になりかねません。

育休から復帰したら、まずは会社の人事や総務の担当者に「育児休業から復帰したので、社会保険料の月額変更の手続きをお願いします」と伝えることが大切です。なお、この特例はあくまで「育児」を理由とする場合に適用されるため、「介護」が理由の時短勤務では利用できないことを覚えておきましょう。

将来もらえる年金は減ってしまうのか?

「毎月納める保険料が安くなるのは嬉しいけど、将来もらえる年金が減るのでは?」と不安に感じる方もいるでしょう。その心配を解消するための制度が、「養育期間の特例」です。

この特例を申請することで、3歳未満の子どもを養育する期間中に時短勤務などで給与が下がっても、将来の年金額を計算する際には、給与が下がる前の高い水準のままで計算してもらえるのです。

つまり、「毎月支払う保険料は安くなるけれど、将来の年金額は下がらない」という、子育て世代にとって非常にありがたい仕組みになっています。この特例も自動では適用されないため、「育児休業等終了時報酬月額変更届」とあわせて、必ず会社に申請を依頼しましょう。

「給料がきつい…」と感じたら。時短勤務の収入減をカバーする3つの方法

社会保険料の負担を軽くできるとはいえ、「やっぱり家計が厳しい…」と感じる方も少なくないでしょう。ここでは、収入減の負担を少しでも和らげるための方法を3つ紹介します。

  1. 2025年4月から新設された「育児時短就業給付」を活用しよう
  2. 会社独自の補助金や手当がないか確認しよう
  3. 働き方の見直しや資産運用を専門家に相談しよう

これらを活用して、賢く収入減の悩みを乗り越えましょう。

2025年4月から新設された「育児時短就業給付」を活用しよう

まず知っておきたいのが、2025年4月1日からスタートした「育児時短就業給付金」です。この制度は、育児のために時短勤務をする人の経済的な負担を軽くすることを目的としています。

具体的には、2歳未満の子どもを養育するために時短勤務をし、給与が下がった場合に、その給与額の10%が雇用保険から給付金として支給されるという内容です。

「時短就業開始時の賃金に対する各月の賃金の率」、「賃金と支給額」の折れ線グラフ。
育児時短就業給付の給付率を示している。

出典:厚生労働省「育児時短就業給付の内容と支給申請手続」

例えば、時短勤務で月給が22.5万円になった場合、その10%にあたる2万2,500円が上乗せで受け取れるイメージです。ただし、時短勤務前の給与額を超えないように調整されるなど、いくつかのルールはあります。

この制度も自動で受けられるわけではなく、会社を通じて申請が必要になるので、対象になる方はぜひ覚えておきましょう。

会社独自の補助金や手当がないか確認しよう

自身がお勤めの会社が独自に用意している支援制度も、忘れずにチェックしましょう。法律で定められた以上の手厚いサポートを、福利厚生として提供している企業は意外と多いです。

まずは、会社の就業規則や社内向けのウェブサイト(イントラネット)を確認してみてください。「育児支援金」や「家族手当」といった名目で給与に上乗せされたり、「ベビーシッター代の補助」といった形で子育て費用をサポートしてくれたりするケースがあります。

普段あまり意識していなかった制度の中に、使えるものが見つかるかもしれません。もし自分で調べてもよく分からなければ、遠慮なく人事部や総務部の担当者に聞いてみましょう。「育児で時短勤務をするのですが、何か会社で利用できる支援制度はありますか?」と尋ねてみるのが、一番確実で早い方法です。

働き方の見直しや資産運用を専門家に相談しよう

様々な制度を活用しても、教育資金や住宅ローンなど、将来のことを考えるとどうしてもお金の不安が拭えない…という場合もあるでしょう。そんな時は、お金の専門家であるFPに相談してみるのも有効な選択肢です。

FPは、現在の家計の状況や今後のライフプランを客観的に分析し、あなたの家庭に合ったアドバイスをします。

時短勤務で働き方が変わるタイミングは、家計全体を見直す絶好のチャンスです。「専門家への相談はハードルが高い」と感じる方は、無料のオンラインセミナーから参加してみることをおすすめします。

まとめ

この記事では、時短勤務の給与計算から社会保険料の手続き、そして収入減をカバーする方法まで紹介しました。

給与計算の3ステップを参考に手取り額を把握し、「育児休業等終了時報酬月額変更届」と「養育期間の特例」は忘れずに申請しましょう。2025年から始まった「育児時短就業給付」も、家計の心強い味方になってくれます。

時短勤務は、家族とのかけがえのない時間を得られる働き方です。制度を正しく理解して賢く活用すれば、お金の不安は解消できます。この記事を参考に、仕事と家庭の両立を実現させてください。

もし家計のことで悩んだら、一人で抱え込まず専門家に相談してみるのが解決への一番の近道です。マネースクール101では、FPへの無料相談が可能です。

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