
社会人になり貯金が増えてくると、奨学金の毎月の返済や利息がもどかしく感じるものです。しかし、早く借金をなくしたいという一心で、手元の現金を使い果たしてしまうのは少し危険かもしれません。
本記事では、繰り上げ返済の仕組みから、メリット・デメリット、具体的なシミュレーション、そして後悔しないための判断フローまでを徹底解説します。
「奨学金を繰り上げ返済するべきか」本記事を読んで、あなたにとっての最適な選択を見つけてください。
この記事でわかる事
- 奨学金の「繰り上げ返済」とは?
- 奨学金を繰り上げ返済するメリット・デメリット
- 奨学金の「繰り上げ返済」判断フロー
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1:そもそも奨学金の「繰り上げ返済」とは?
まずは奨学金の繰り上げ返済の『基本』と『種類』を抑えておきましょう。
1−1:奨学金の繰り上げ返済は、原則として「期間短縮型」
奨学金の繰り上げ返済は、原則として「期間短縮型」です。まとまったお金を返すことで、返済が終わる時期を早めます。
例えば、手元の資金で「将来の1年分」を先に返済したとしましょう。すると、返済期間は1年分が短縮されます。
ここで注意したいのは、「翌月からの引き落とし額は変わらない」ということ。あくまで返済が終わるゴールが近づくだけであり、毎月の家計の負担を軽くするわけではないことを理解しておきましょう。
1−2:奨学金の種類
次に押さえておきたいのが、奨学金の種類です。

「第一種(無利子)」か「第二種(有利子)」かによって、繰り上げ返済をする意味合いが大きく変わります。
まずはご自身の奨学金がどちらのタイプか、日本学生支援機構のサイト(スカラネット・パーソナル)などで確認することから始めましょう。
2:奨学金を繰り上げ返済する3つのメリット
奨学金を繰り上げ返済する主なメリットは、金銭的な「節約」と精神的な「安心」です。
具体的な3つのメリットについて、ひとつずつ見ていきましょう。
2-1:利息負担がなくなり総返済額が減る(第二種の場合)
第二種奨学金を借りている方にとって、最大のメリットは「支払う利息を減らせる」ことです。
ローンの返済では、借りている期間が長ければ長いほど、利息の負担が積み重なっていきます。繰り上げ返済を行うと、支払ったお金は全額「元金」の返済に充てられます。
元金が減ることで、その元金に対して将来かかるはずだった利息がすべて消滅するのです。
2-2:機関保証の保証料が一部戻ってくる可能性がある
第一種奨学金の方にも関係があるのが、この「保証料の返還」です。
奨学金を借りる際、連帯保証人(親族など)を立てずに「機関保証」を利用した方は、毎月の奨学金から保証料が引かれていたはずです。この保証料は、返済終了までの期間分を前払いしている形になっています。
繰り上げ返済をして返済期間が短縮されると、その短縮された期間分の保証料は不要になります。そのため、「払いすぎた保証料」として所定の計算に基づき、お金が戻ってくる場合があるのです。
ただし、支払った額がそのまま月割りで戻るわけではなく、手数料などが引かれた金額になる点は覚えておきましょう。
2-3:借金があるという精神的なプレッシャーから解放される
数字には表れないものの、多くの人がメリットとして挙げるのが「精神的な解放感」です。
「数百万円の借金がある」という事実は、無意識のうちに日々のストレスになっているものです。完済することで、「もう借金はない」という自信が生まれ、これからの人生設計を前向きに考えられるようになります。
また、住宅ローンの審査では奨学金も「借金」として計算されるため、完済しておけば、審査がスムーズに進んだり、借りられる額が増えたりする可能性があります。
3:知っておくべき繰り上げ返済の3つのデメリット
メリットがある一方で、繰り上げ返済には見落としがちなリスクも潜んでいます。
「早く返したい」という一心で手元のお金を使い果たしてしまい、後で後悔するケースは少なくありません。
ここでは、必ず知っておくべき3つのデメリットを解説します。
3-1:手元の「生活防衛資金」が減り、急な出費に対応できなくなる
最も大きなデメリットは、手元の現金(流動性)が失われ、急な出費に対応できなくなることです。
奨学金の繰り上げ返済は一方通行です。一度返してしまったお金は、たとえ翌日に病気や失業でお金が必要になったとしても、二度と引き出すことはできません。
まずは、何があっても生活を守れる「生活防衛資金(生活費の3〜6ヶ月分)」を確保し、そのお金には手を付けないことが鉄則です。
生活防衛資金について、さらに詳しく知りたい方は下記の記事もご覧ください。
3-2:将来のライフイベントの際に現金不足になるおそれがある
これからさまざまなライフイベントを迎える方にとって、現金不足になるおそれがあることはデメリットです。
例えば、
- 結婚:結婚式や新婚旅行、新生活の準備には数百万円単位のお金がかかる
- 住宅購入:頭金や諸費用(手数料や税金)として、物件価格の1〜2割程度の現金が必要
これらのタイミングで「奨学金は完済しているけれど、貯金はゼロ」という状態だと、選択肢が狭まってしまいます。
特に住宅ローンを組む際は、手元に頭金があることで金利優遇を受けられるケースもあります。そのため、無理に奨学金を返すよりも、現金を温存しておいた方が有利な場合も多いです。
3-3:資産運用の機会を失ってしまう
繰り上げ返済をすることで、本来は資産運用に回せたお金を失う(機会損失)こともデメリットです。
もし、あなたの奨学金の金利が0.5%以下などの低金利であれば、慌てて返す必要はないかもしれません。
例えば、そのお金をNISA(少額投資非課税制度)などを活用して資産運用すれば、長期的には年利5〜7%程度のリターンが期待できる可能性もあります。
もちろん投資にはリスクがあります。しかし、インフレ(物価上昇)でお金の価値が下がっている現在、現金を借金返済で消してしまうことは「機会損失」になるおそれがあるのです。
4:【シミュレーション】いくら安くなる?ケースごとに紹介
「結局、自分の場合はいくら得するの?」その疑問に答えるために、具体的な数字で比較してみましょう。
ここでは、以下の条件でシミュレーションを実施します。
【前提条件】
- 借入金額:350万円
- 返済期間:20年(残りの返済期間:10年)
4-1:第二種(金利2.2%)で繰り上げ返済した場合
手元の資金をいくら返済に充てるかによって、「節約できる金額」と「短縮される期間」は変わります。

200万円を一括返済した場合、残りの期間(10年分)にかかるはずだった利息約22.3万円が一気にゼロになります。数字の面だけで見れば、一括返済が最もお得なのは間違いありません。
一括返済をすると、当然ながら手元の現金が200万円減ります。もし、この返済によって貯金がほとんどなくなってしまうようであれば、危険です。病気や怪我、車の故障や結婚式などの急な出費に対応できず、逆に高金利のカードローンを借りるような事態になるのは避けましょう。
4-2:第一種(無利子)で繰り上げ返済した場合
続いて、利息がつかない「第一種奨学金」の場合を見てみましょう。借りた時に機関保証を選んだかどうかで、結果が大きく変わります。

人的保証の方は、いま200万円を返しても、10年かけてゆっくり返しても、支払う総額は1円も変わりません。
一方で機関保証の方は、前払いしていた保証料のうち、将来の分(約9万円程度)が戻ってきます。「9万円も戻るならお得!」と感じるかもしれませんが、200万円という大金を手放す対価としては、少し物足りない数字ともいえます。
5:結局どうすべき?「繰り上げ返済」する・しないの判断フロー
ここでは、「結局、自分はどうすればいいの?」という方のために、繰り上げ返済をするかしないかの判断フローを解説します。
ご自身の状況がどちらに近いか、チェックしてみてください。
5-1:繰り上げ返済を優先すべき人
以下の条件に当てはまるなら、繰り上げ返済を「前向き」に検討しましょう。
- 第二種奨学金で、金利が高い
→目安として固定金利で1.0%以上、特に上限に近い2〜3%の人 - 返済しても十分な貯金が残る
→繰り上げ返済をした後も、手元に「生活費の半年分以上」の現金が残る - 投資よりも「確実性」を取りたい
→資産運用はリスクがあって怖い、あるいは勉強する時間がないため、確実な節約効果を得たい
5-2:繰り上げ返済を見送るべき人
以下の場合は、今は返済をせずに「現金を温存」することをおすすめします。
- 数年以内に大きな出費がある
→結婚、出産、住宅購入、車の買い替えなどを3年以内に控えている - 第一種(無利子)、または超低金利の第二種
→金利が0.1%以下であれば、急ぐ経済的メリットはほぼありません - 貯金が心もとない
→返済すると手元の貯金が「生活費の3ヶ月分」を切ってしまう - 資産運用でお金を増やしたい
→NISAなどを活用し、奨学金の金利以上のリターン(年利3%〜)を長期的に目指せる
5-3:判断に迷う場合はFPに相談しライフプランを見直す
「貯金はある程度あるけれど、将来の教育費や老後資金が不安で返済に踏み切れない」そんなときは、お金のプロであるFPに相談するのも有効です。
FPに相談すれば、現在の収支だけでなく、将来のライフイベントも含めた「キャッシュフロー表」を作成します。「手元のお金で奨学金を返済しても、5年後、10年後に困ることはないか」を数字でシミュレーション可能。感情ではなく、論理的に安心できる決断ができるでしょう。
6:まとめ
奨学金の繰り上げ返済は、利息を減らせるという大きなメリットがあります。しかし、「手元の現金を失う」というリスクと隣り合わせです。
「早く借金を無くしたい」という気持ちは大切ですが、それによって現在の生活が不安定になっては本末転倒です。目先の損得だけでなく、10年後のライフプランまで見据えて、あなたにとってベストなタイミングを見極めてください。
もし「自分の場合はどうすべきか判断できない」と迷う場合は、FPに相談して客観的なシミュレーションを行ってもらうことをおすすめします。
