
老後一人暮らしの生活費は一体いくら準備すればよいのか、具体的な数字を知りたいと思いませんか?
本記事では公的データに基づき、一人暮らし女性のリアルな老後の生活費を見ていきます。「持ち家」と「賃貸」で支出がどう変わるのか、必要額を計算するための3ステップ、さらに5つの具体的な対策もご紹介します。
まずは現状をしっかりと把握し、老後の漠然としたお金の不安を解消していきましょう。

1:老後一人暮らしの女性が増加?高まる「お金」への不安
現代の日本では、生涯未婚率の上昇などを背景に、高齢期を一人で過ごす女性が予測を上回るペースで増えています。
国立社会保障・人口問題研究所の調査によると、65歳以上の女性のうち一人暮らしの割合は、2050年にはおよそ3人に1人にあたる約29.3%に達する見込みです。こうした変化の背景には、50歳時点での女性の未婚率が2000年の5%から2020年には18%へと急上昇したことも影響しています。
また、内閣府の調査では「老後の生活設計」は常に国民の悩みの中心にあり、半数以上の人が「年金だけでは生活が難しい」と感じているというデータもあります。
どのような点に悩みを感じているか

老後のお金の問題は、多くの女性にとって今から向き合うべき身近な課題といえるでしょう。
2:老後、女性一人暮らしの生活費は月いくら?
漠然とした不安を解消するためには、まず「実際にいくら必要なのか」という具体的な数字を知ることが大切です。
ここでは公的な統計データを基に、高齢女性の一人暮らしにかかるリアルな生活費を紹介します。平均的な支出額からその詳しい内訳、そして生活費を大きく左右する「住居費」まで、ひとつずつ見ていきましょう。
2-1:平均的な支出は約15万円
2024年の総務省の「家計調査年報」によると、65歳以上の単身無職世帯(おもに年金で暮らす一人暮らしの高齢者)が1ヶ月に使う生活費(消費支出)は、平均で149,286円でした。
65歳以上の単身無職世帯(構成単身無職世帯)の家計収支~2024年~

一方で、税金などを差し引いた手取り収入にあたる可処分所得が121,469円です。つまり、毎月27,817円の赤字が出ており、貯蓄などを取り崩しながら生活していることになるのです。
2-2:支出の内訳を詳しく解説
それでは、月約15万円の支出はどのようなことにお金が使われているのでしょうか。主な内訳は以下の通りです。ご自身の生活スタイルと比べる際の参考にしてください。

中でも注目すべき費目は「住居」が12,693円と低い点です。この住居に関する金額については次章で詳しく解説します。
2-3:【重要】「持ち家」と「賃貸」で大きく変わる住居費
老後の生活費を考えるうえで、他のどの項目よりも大きな影響を与えるのが「住居費」です。先のデータで住居費が月12,693円と低かったのは、調査対象に住宅ローンを完済した「持ち家」で暮らす人が含まれているためです。
もし、あなたが「賃貸」で暮らす場合、状況は異なります。例えば、都市部で単身者向けの部屋を借りれば、家賃は月7万円以上になることも珍しくありません。
仮に家賃7万円を、持ち家以外の生活費(約13.6万円)に上乗せすると、1ヶ月の総支出は約20.6万円に跳ね上がります。これは平均の総支出(約14.9万円)と比べて、月に約5.7万円、年間で約68万円も多くのお金が必要になる計算です。
3:【簡単3ステップ】あなたの老後の収支をシミュレーション
平均データは参考になりますが、あくまで指標のひとつです。本当に重要なのは、あなたご自身の状況に合わせた具体的な資金計画です。
これから紹介する3つの簡単なステップで、あなたの老後に必要な収支を実際に計算していきましょう。
- ステップ1:老後の「支出」を予測する
- ステップ2:老後の「収入」を把握する
- ステップ3:「不足額」がいくらか計算する
3-1:老後の「支出」を予測する
まず、将来のあなたの生活に毎月いくらかかるのか、具体的な支出額を予測します。前章で紹介した平均データを基準にして、ご自身の支出金額を調整していきましょう。
1. 基準額を決める
- 持ち家の場合:月額 約15万円(ローン完済)
- 賃貸の場合:月額 約20万円(家賃7万円)
2. 個別の状況に合わせて調整する
次に、基準額に対して、以下のような項目を考慮して金額を足したり引いたりします。
- 健康状態:定期的な通院や薬代、健康維持のための費用は必要か?
- ライフスタイル・趣味:旅行や習い事、友人との交際費にかけたい費用は?
- その他:車の維持費やペット関連費は必要か?
3-2:老後の「収入」を把握する
次に、老後の収入の柱となる公的年金を、自分がいくら受け取れるのかを正確に把握します。下記のように、働き方によって公的年金の受給額は大きく異なります。
- 国民年金(基礎年金)のみの場合:月額 約5.2万円
※基礎のみ共済なし・旧国年(5年年金除く) - 厚生年金に加入していた場合:月額 約11.1万円
※令和5年度 65歳以上の金額
ご自身の正確な見込み額を知るには、毎年誕生月に届く「ねんきん定期便」を確認するのが確実です。また、Webサイト「ねんきんネット」に登録すれば、いつでも最新の年金額を試算できます。
3-3:「不足額」がいくらか計算する
これまでのステップで確認した「支出」と「収入」の数字を使って、実際に準備すべき金額を計算します。ここでは、「月々の不足額 × 12ヶ月 × 老後年数(例:25年)」で、老後全体の不足額を見ていきましょう。
【ケース1】持ち家で暮らし、厚生年金を受給する場合
月々の不足額を算出するために、ステップ1で算出した持ち家の支出(約14.9万円)から、ステップ2の厚生年金の収入(約11.1万円)を引きます。
月々の不足額の計算:
約15万円(支出) – 約11.1万円(収入) = 約3.9万円
25年間の総不足額の計算:
約3.9万円 × 12ヶ月 × 25年間 = 約1,170万円
【ケース2】賃貸で暮らし、厚生年金を受給する場合
賃貸の支出(約20万円)から、厚生年金の収入(約11.1万円)を引いて計算します。
月々の不足額の計算:
約20万円(支出) – 約11.1万円(収入) = 約8.9万円
25年間の総不足額の計算:
約8.9万円 × 12ヶ月 × 25年 = 約2,670万円
【ケース3】賃貸で暮らし、国民年金のみを受給する場合
賃貸の支出(約20万円)から、国民年金の収入(約5.2万円)を引いて計算します。
月々の不足額の計算:
約20万円(支出) – 約5.2万円(収入) = 約14.8万円
25年間の総不足額の計算:
約14.8万円 × 12ヶ月 × 25年 = 約4,440万円
このように不足額を具体的に把握することが、明確な目標設定につながります。
4:今から始められる!老後の生活費に備える5つの対策
シミュレーションで将来の不足額が明らかになっても、過度に心配する必要はありません。今から着実に準備を始めれば、経済的な不安は十分に軽くできます。
対策の基本は、「支出を減らす」「資産を増やす」「収入を得る期間を延ばす」という3つの考え方です。これらを組み合わせた5つの具体的な対策をご紹介します。
4-1:家計を見直し、固定費を削減する
最初に取り組むべき対策は、定期的に見直すことで節約効果がずっと続く「固定費」の削減です。日々の食費などを切り詰めるよりも、ストレスなく家計を改善できます。
家計簿アプリなどを活用して、毎月の支出を正確に把握することから始めましょう。そのうえで、以下のような項目を見直すのが効果的です。
効果の高い固定費削減項目の例
- 通信費:格安SIMへの乗り換え
- 光熱費:電力・ガス会社の切り替え
- 保険料:保障内容の定期的な見直し
- サブスクリプションサービス
4-2:NISAやiDeCoで効率的に資産運用を始める
公的年金や預貯金だけで老後資金を準備するのが難しい今、国が用意した税制優遇制度を活用し、効率的にお金を育てていく視点も大切です。その代表が「NISA」と「iDeCo」です。
【NISA(少額投資非課税制度)とは】
NISAは、専用口座で行った投資で得られた利益(売却益や分配金)が非課税になる制度です。通常、投資の利益には約20%の税金がかかりますが、これが免除されるため効率的です。いつでも引き出しが可能で、柔軟性が高いのが特徴です。
【iDeCo(個人型確定拠出年金)とは】
iDeCoは、老後資金の準備に特化した私的年金制度です。毎月の掛金が全額「所得控除」の対象となり、その年の所得税や翌年の住民税が軽減されるという強力な税制優遇があります。ただし、原則60歳まで資金を引き出すことはできません。
まずは少額からでも始められるNISAを検討し、税金の負担を軽くしたい場合はiDeCoも併用していきましょう。両制度のメリットを活かすことが資産形成の近道です。
4-3:長く健康に働き、収入源を確保する
支出を減らし、資産を増やすことと並行して考えたいのが、「収入を得る期間を延ばす」ことです。つまり、できるだけ長く健康に働き続けるという選択肢です。
働くための大前提は健康です。バランスの取れた食事や適度な運動を心がけ、健康寿命を延ばすことが、結果的に経済的な安定につながります。
4-4:個人年金保険や貯蓄型保険で備える
NISAやiDeCoが積極的な資産形成だとしたら、民間の保険会社が提供する「個人年金保険」は、より着実性を重視した備えといえます。公的年金に上乗せする形で、計画的に老後資金を準備する方法です。
個人年金保険は、契約時に決めた年齢まで保険料を払い込み、その後、一定期間または一生涯にわたって年金形式でお金を受け取る仕組みです。将来の受取額が決まっている「定額型」や、運用実績によって受取額が変わる「変額型」などの種類があります。
投資の知識に自信がない方や、リスクを取らずにコツコツ準備したいという安定志向の方に適した選択肢です。
4-5:将来の住まいについて計画を立てる
老後の家計において、最大の変動要因となり得るのが「住居費」です。現在のご自身の状況に合わせて、以下のような選択肢を検討してみましょう。
【持ち家の場合】
■ダウンサイジング
子どもが独立した後など、よりコンパクトで管理しやすい家に住み替える方法
家を売却して得た資金を老後資金に充てられる
■リバースモーゲージ
現在の自宅を担保にして、金融機関から生活資金を借り入れる制度
家に住み続けながら現金収入を得られる
【賃貸の場合】
■生活コストの低いエリアへの移住
都心部から郊外や地方へ移住することで、家賃を大幅に抑えることが可能
■UR賃貸住宅などの活用
礼金・更新料・保証人が不要な物件が多く、高齢になっても入居しやすいというメリットがある
【「サ高住」という選択肢】
■サービス付き高齢者向け住宅
サービス付き高齢者向け住宅(サ高住)は、安否確認や生活相談サービスが付いた賃貸住宅です。
自立しているうちから入居でき、将来の心身の変化に備えながら安心して暮らせるため、一人暮らしの不安を軽減できます。
判断力や体力が十分なうちに、ご自身に合った住居について情報収集を始めることが大切です。
5:まとめ
老後を一人で暮らす女性の生活費について、公的データから具体的な対策まで解説しました。
将来のお金に対する漠然とした不安の正体は、「よくわからないこと」です。まずは、本記事で紹介したシミュレーションでご自身の収支を把握することから始めてみてください。
もしNISAやiDeCo、保険の活用など、どの対策を選べばよいかわからない方は、お金の専門家であるFPに相談するのがおすすめです。あなたの状況や目標に合わせた、最適な資産計画を一緒に考えてくれます。
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