
子どもの将来のため、教育にはしっかりお金をかけてあげたい。そう思う一方で、「うちの教育費、もしかしてかけすぎ?」といった漠然とした不安を感じている方も多いのではないでしょうか。
そんな子育て世代の皆さんの疑問や不安を解消するため、FPの視点から「教育費と年収の最適な割合」を徹底解説。年収別の教育費シミュレーションから、将来の進路ごとにかかる教育費の総額、そしてご家庭に合った教育費の決め方3ステップまで、わかりやすく紹介します。
本記事を読み進めることで、公的な平均データに振り回されることなく、「我が家の教育費」に自信を持って向き合えるようになるはずです。
1:まず結論!教育費の目安は「世帯年収の10〜15%」
将来への漠然としたお金の不安を解消するために、まず知っておきたいのが教育費の一般的な目安です。結論からお伝えすると、教育費は「世帯年収の10〜15%」がひとつの目安とされています。
ここでは、この数字の根拠となる公的データを見ていきましょう。
1−1:公的データで見る!教育費のリアルな平均値は?
生命保険文化センターの調査によると、世帯年収に占める在学費用の割合は、平均で約15%でした。

出典:公益財団法人 生命保険文化センター「教育費が家計に与える影響は?」
注意すべき点は、年収が低い世帯ほど教育費の割合が高くなることです。例えば、年収200万円〜400万円未満の世帯では、教育費が年収の26.7%に達するケースも見られます。

出典:公益財団法人 生命保険文化センター「教育費が家計に与える影響は?」
もちろん、この「15%」という数字は全国平均です。お子さんの人数や進路(公立か私立か)によって最適な割合は大きく変わります。ご自身の家庭の基準を見つけるための参考値として捉えましょう。
1−2:なぜ「年収」ではなく「手取り収入」で考えるべきなのか?
教育費の話では「年収の〇%」という言葉がよく使われますが、「手取り収入」を基準に考えることをおすすめします。理由はシンプルで、それがより現実的で、無理のない家計管理につながるからです。
そもそも、「年収」と「手取り収入」には以下のような違いがあります。
年収(額面収入)とは
税金(所得税や住民税)や社会保険料が引かれる前の、会社から支払われる総額のこと
手取り収入とは
年収から税金などが引かれ、実際に自分の銀行口座に振り込まれる金額のこと
私たちが日々の生活で実際に使えるお金は、この「手取り収入」です。同じ年収500万円の人でも、家族構成などによって手取り額は変わります。だからこそ、「手取り収入」を基準に教育費の予算を決めることが非常に重要なのです。
2:【年収別】あなたの家庭は?教育費の平均割合シミュレーション
収入が変われば、教育費にかけられる金額や、家計に占める割合の感覚も大きく変わってきます。この章では、より具体的にイメージしていただくために、年収別の3つの家庭をモデルケースにして見ていきましょう。
2−1:年収400万円台の家庭の場合
まずは、世帯年収400万円のモデルケースです。この収入層では、子どもの進路選択が家計に直接的に、かつ大きく影響するのが特徴です。

子どもが公立高校に進学すると、年間の学習費総額は約60万円かかります。これは教育費の目安(60万円)の上限に達しており、手取り収入の約19%を占めます。もし、子どもが私立高校に進学した場合は、学習費総額は約103万円です。これは手取り収入の30%以上を占める計算になり、家計は非常に厳しい状況に陥ります。
このように、この年収層では子どもの進路を「公立にするか、私立にするか」で家計への負担が大きく変わることを理解しておきましょう。
2−2:年収600万円台の家庭の場合
次に、年収600万円のモデルケースを見ていきます。子どもの進路の選択肢が広がる一方で、支出全体のバランス感覚がより重要になる層と言えるでしょう。

子どもが公立高校に通う場合、学習費(約60万円)を支払っても、目安の90万円までには年間約30万円の余裕が生まれます。この分を大学受験に向けた塾費用などに充てることができるでしょう。
一方、私立高校に進学した場合、学習費(約103万円)は教育費の目安を上回ります。手取り収入に占める割合も約22%と高くなるため、他の支出をある程度見直す必要が出てきます。
私立高校を選択する場合は、家計全体でのバランスを考えた判断が重要です。
2−3:年収800万円以上の家庭の場合
最後に、収入に比較的余裕のある年収800万円以上の家庭のシミュレーションです。教育の選択肢が多いからこそ、「我が家の方針」を明確に持つことが重要です。

子どもが私立高校に進学した場合でも、学習費総額(約103万円)は教育費の目安(120万円)の範囲内に収まります。手取り収入に占める割合も約17%となり、家計への負担は限定的と言えるでしょう。
ただし、余裕があるからといって教育費をかけすぎると、自身の老後資金の準備がおろそかになる可能性もあります。ライフプラン全体を見据えた長期的な視点を忘れないようにしましょう。
3:【進路別】すべて公立・私立の場合、総額はいくら違う?
ここでは、「幼稚園から高校卒業までの15年間」で、教育費の総額がいくらになるのかを見ていきます。「すべて公立」と「すべて私立」のケースを比較すると、その差に驚くかもしれません。
進路選択が将来の家計に与えるインパクトの大きさを確認していきましょう。
3−1:幼稚園から高校まで「すべて公立」に通った場合
まず、子どもの教育費プランを考えるうえでの基本となるのが「すべて公立」のケースです。
文部科学省の調査によると、幼稚園から高校までの15年間をすべて公立に通った場合、子ども1人あたりの学習費総額は約596万円でした。
これは学校の授業料や給食費だけでなく、塾や習い事などの費用もすべて含んだ金額です。もちろん、この後に大学進学費用が別途必要になることも忘れてはいけません。
総額だけを見ると大きな金額に感じますが、15年間(180ヶ月)で割って月々の負担額に換算すると約3.3万円です。この金額を毎月、無理なく準備できるかがひとつの目安になります。
3−2:幼稚園から高校まで「すべて私立」に通った場合
次に、「すべて私立」のケースを見ていきましょう。公立の場合と比較すると、その差は歴然です。
同じく文部科学省の調査によると、幼稚園から高校までの15年間をすべて私立に通った場合、子ども1人あたりの学習費総額は、約1,976万円にも上ります。これは、すべて公立の場合の約3.3倍という大きな金額です。
特に、私立小学校の6年間だけで1,000万円を超える費用がかかることが、総額を押し上げる最大の要因となっています。当然、この後に大学進学費用がさらに必要です。
このケースを月々の負担額に換算すると約11万円。この金額を15年間、安定して支出し続けることができるかどうかが、進路を判断するうえで重要なポイントとなるでしょう。
4:「かけすぎかも?」と思ったら。あなたの家庭に合った教育費の決め方3ステップ
他人の家庭と比べて一喜一憂するのではなく、大切なのは「あなたの家庭にとっての最適なバランス」を見つけること。「うちの教育費、少し負担が大きいかも…」と感じたら、それは家計を見直す絶好のチャンスです。
ここでは、ご家庭に合った教育費を決めるための具体的な3つのステップをご紹介します。このステップを踏むことで、納得感を持って教育費と向き合えるようになるはずです。
4−1:まずは現状の家計と教育費を「見える化」する
最初に取り組むべきは、現状把握です。まずは、家計簿アプリやノートなどを使い、以下の情報を書き出してみましょう。
- 毎月の収入(手取り額)を書き出す
- 毎月の支出を項目別に書き出す
- 教育費の内訳を細かく書き出す
- 教育費が手取り収入の何%か計算する
「感覚」ではなく「数字」で家計を見ることが、不安解消への第一歩です。
4−2:子どもの希望と将来のゴール(目標額)を話し合う
次のステップは、目標の明確化です。
教育の主役は、あくまで子ども自身です。一方的に親が判断するのではなく、ぜひ親子で将来について話し合う機会を持ってみてください。ゴールが明確になることで、お金を準備するモチベーションも大きく変わります。
例えば、公立か私立か、文系か理系か、自宅通学か一人暮らしかで、必要な金額は数百万円単位で変わります。具体的な目標金額と期限を設定し、今後の貯蓄計画を立てていきましょう。
4−3:他の支出(住宅ローン等)とのバランスを見て上限を決める
目標金額が決まったら、いよいよ最終ステップです。その目標を達成するために、家計全体の中から、無理なく教育費に回せる上限額を決めていきます。
ここで重要なのは、教育費だけを聖域化しないこと。住宅ローンやご自身の老後資金など、人生全体のバランスを考えることが、家族みんなの幸せにつながります。
通信費や保険料、使っていないサブスクなどの固定費の見直しは、一度行うだけで効果が持続するのでおすすめです。
5:支援制度で教育費の割合を下げる方法
家計のやりくりを工夫するだけでなく、国や自治体が用意している支援制度を賢く活用することも非常に有効です。知っているかどうかで年間の支出が数十万円単位で変わることもあります。
ここでは、支援制度の一部を紹介します。
高等学校等就学支援金制度
所得要件を満たす世帯を対象に、公立なら授業料相当額(年11万8,800円)、私立なら最大で年39万6,000円が支援されます。
なお、2026年度以降については、所得制限の撤廃や私立高校等の加算額の引き上げを含むいわゆる「高校授業料の無償化」が検討中です。
高等教育の就学支援新制度
住民税非課税世帯やそれに準ずる世帯の学生を対象に、「授業料・入学金の減免」と「返済不要の給付型奨学金」がセットで支援されます。
自治体独自の支援
国だけでなく、都道府県や市区町村が独自に行っている子育て支援です。
「子どもの医療費助成」や「多子世帯への保育料補助」など、地域によって様々な制度があります。
お住まいの役所のウェブサイトなどで「子育て支援」と検索し、情報収集してみましょう。
ご自身の家庭が対象になる制度がないか、ぜひ一度チェックしてみてください。
6:まとめ
調査データを見て、「うちは平均より低いから安心した」あるいは「思ったより高くて不安になった」など、色々な感想を持たれたかもしれません。大切なことは、平均の数字に一喜一憂することなく、「我が家にとっての最適なバランス」を見つけることです。
今回ご紹介した「教育費の決め方3ステップ」を参考に、まずはご家庭の現状を把握し、お子さんと将来について話し合うことから始めてみてください。数字という客観的な事実と、家族の想いを掛け合わせることで、漠然としたお金の不安は具体的な「計画」へと変わっていきます。
もし、ご家庭だけで計画を立てるのが難しいと感じたり、より専門的なアドバイスが欲しいと思われたりした際には、お金のプロであるFPに相談するのも有効な選択肢のひとつです。FPへの無料相談を検討中の方は、下記のリンクから詳細をご確認ください。
