厚生年金70歳の繰下げ受給は損か得か?支給額シミュレーションと損益分岐点を徹底解説!

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厚生年金70歳の繰下げ受給は損か得か?支給額シミュレーションと損益分岐点を徹底解説!
2026.02.08

厚生年金70歳の繰下げ受給は損か得か?支給額シミュレーションと損益分岐点を徹底解説!

「70歳まで受給を待てば年金が増える」と聞いても、本当にそれが自分にとって正解なのか迷っていませんか?

実は、70歳からの繰下げ受給には「最大42%増額」という大きなメリットがある反面、働き方や家族構成によっては逆に損をしてしまうリスクも潜んでいます。

この記事では、「繰下げ受給」の仕組みから気になる損益分岐点単身・夫婦といったパターン別のシミュレーションをわかりやすく解説します。

制度の仕組みを理解し、あなたにとって最適な厚生年金の受け取り方を見つけてください。

この記事でわかる事

  • 70歳受給開始で厚生年金が増える仕組み
  • 厚生年金支給額のシミュレーション
  • 受給見込み額を確認する方法

この記事を書いたFP
厚生年金70歳の繰下げ受給は損か得か?支給額シミュレーションと損益分岐点を徹底解説!
古賀 孝夫
古賀 孝夫
難しい金融の仕組みや、低金利時代の資産運用について分かりやすくお伝えします!

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目次

1:70歳受給開始で厚生年金が増える2つの仕組み

年金が増える仕組みは2つ存在します。

1つは、受給開始を遅らせる「繰下げ受給」。もう1つは、70歳まで会社員として働く「加入期間延長」です。

まずは、この2つの違いを正しく理解しましょう。

1-1:受給開始を遅らせる「繰下げ受給」での増額(最大42%)

65歳で受け取れる年金を、あえて受け取らずに先送りすることを「繰下げ受給」と呼びます。受け取りを1ヶ月遅らせるごとに、年金額は0.7%ずつ増えていきます。

もし65歳から70歳まで繰下げ受給をした場合、増額率は最大で「42.0%」です。例えば、年額78万円の年金であれば、70歳からは年額110万7,600円を受け取れる計算です。

受給開始年齢による年金額の変化を示す棒グラフ。65歳を100%とし、60歳なら70%(-30%)、70歳なら142%(+42.0%)となる。

この仕組みの最大の特長は、一度増えた年金額が「一生涯続く」という点です。長生きすればするほど、受け取る総額は増えていきます。

ただし、年金の受給額が増えるとそれに応じて「所得税」や「住民税」の負担も増えます。さらに「国民健康保険料」や「介護保険料」も連動して上がってしまう可能性があるため、額面上の数字だけを見て判断するのは危険です。

税金や保険料が引かれた後の「実際に使えるお金(手取り額)」がどれくらい増えるのかを、しっかりと見積もっておくことが重要です。

1-2:70歳まで働き「厚生年金に加入する」ことによる上乗せ

もう1つの仕組みは、70歳まで働いて保険料を納めることです。70歳までは厚生年金に入ることができるので、長く働けば働くほど、将来もらえる年金の「元本」は積み上がります。

ただし、この場合「在職老齢年金」という制度に注意が必要です。


在職老齢年金とは

老齢厚生年金を受給されている方が厚生年金保険の被保険者であるときに、受給されている老齢厚生年金の基本月額と総報酬月額相当額に応じて年金額が支給停止となる場合があります。

引用:日本年金機構「在職老齢年金の計算方法」


具体的には、「給料(ボーナス込みの月額)」と「本来もらえる厚生年金」を足した金額が、基準額(2025年度は51万円)を超えると、その超えた分の半額が年金からカットされてしまうのです。

在職老齢年金の計算方法のフローチャート。基本月額と総報酬月額相当額の合計が51万円以下なら全額支給、超える場合は調整後の支給額を算出する。
出典:日本年金機構「在職老齢年金の計算方法」

年金がカットされる計算例

例えば、「厚生年金が月12万円」の人が、「月給45万円」で働いているケースを見てみましょう。


  1. 合計額を確認する
    年金12万円 + 給料45万円 = 合計57万円
  2. 基準額(51万円)と比べる
    合計57万円は、基準の51万円を「6万円」超過
  3. カット額が決まる
    オーバーした6万円の「半分」がカット
    6万円 ÷ 2 = 3万円(カットされる金額)

この場合、本来12万円もらえるはずの年金から3万円が引かれ、実際に受け取れるのは9万円に減ってしまいます。

1-3:65歳受給と70歳受給の総受給額比較(損益分岐点)

70歳受給を選ぶ際に最も気になるのが、「結局、何歳まで生きれば得をするのか?」という損益分岐点です。

ここでは、税金や保険料を引く前の「額面」で見てみましょう。

年金の受給開始年齢別の累積受給総額シミュレーション。60歳(繰上げ)、70歳(繰下げ)、75歳(繰下げ)それぞれの損益分岐点を示すグラフ。

70歳から42%増えた年金を受け取り始めた場合、65歳から受け取り始めた人の受給総額を追い抜くのは、受け取り開始から約11年11ヶ月後です。年齢でいうと「約81歳11ヶ月」になります。

日本の男性の平均寿命は約81歳、女性は約87歳です。損益分岐点は、男性であれば平均寿命とほぼ同じですが、女性であれば平均寿命まで生きるだけで、繰下げた方が受給総額は多くなる可能性が高いといえます。

2:70歳受給時の厚生年金支給額をシミュレーション

ここでは、実際に数字で見てみましょう。

「65歳時点で月額15万円の年金(老齢基礎年金+老齢厚生年金)」を受け取れる人をモデルにして、次の2パターンでシミュレーションします。

同じ「月15万円」の人でも、独身か、配偶者がいるかによって、70歳繰下げ受給の損得は大きく変わります。

2-1:単身者の場合

独身の方や、扶養する配偶者がいない方のケースです。このケースは、シンプルに制度のメリットを受けられます。


前提条件

  • 本人の年金:月額15万円(65歳時点)
  • 配偶者:なし

受給開始の年齢と受け取れる厚生年金支給額(月額

  • 65歳で受け取る場合:15万円
  • 70歳で受け取る場合:21万3,000円(計算式:15万円 × 1.42倍)

結論

毎月の受け取り額が「+6万3,000円」アップします。


単身者の場合、次に説明する「加給年金の消滅」などのデメリットが一切ありません。長生きすればするほど確実に得をするため、資金に余裕があるなら70歳からの受給(繰下げ)を検討しましょう。

2-2:夫婦世帯の場合

次に、会社員の夫と、年下の専業主婦の妻という組み合わせです。ここでのポイントは、夫が65歳になるともらえる「加給年金(年間約40万円)」です。


加給年金とは

厚生年金に20年以上加入した人が65歳になった時点で、65歳未満の配偶者がいる場合に上乗せされる年金のこと


前提条件

  • 夫の年金:月額15万円(65歳時点)
  • 妻:年下の専業主婦(夫が65歳時点で妻は65歳未満)
  • 加給年金:夫に受け取る権利がある(月額約3.3万円)

受給開始の年齢と受け取れる厚生年金支給額(月額)

  • 65歳で受け取る場合:18万3,000円(夫の年金15万円 + 加給年金 3.3万円)

※妻が65歳になるまで、この上乗せが続きます。

  • 70歳で受け取る場合:21万3,000円(夫の年金21万3,000円+ 加給年金 0円)

結論

70歳繰下げ受給にすると月額は増えますが、待機している5年間に本来もらえるはずだった「加給年金(5年間で合計約200万円)」には繰下げ増額がなく、待機期間分は完全に受け取れなくなります。


受け取れなかった200万円の元を取るには、90歳近くまで長生きしなければなりません。そのため、このケースでは「夫の厚生年金は65歳から受け取って加給年金をもらう」、そして「基礎年金だけを70歳まで繰り下げる」という選択を検討するとよいでしょう。

3:自分の受給見込み額を確認する3つの方法

ここまでのシミュレーションはあくまでモデルケースです。実際の受給額は、これまでの給与額や加入期間によって一人ひとり異なります。

「自分の場合はどうなるのか」を正確に知るために、以下の3つの方法で確認してみましょう。

3-1:ねんきん定期便の「老齢年金の見込額」を見る

最も手軽なのは、誕生月に届く「ねんきん定期便」を確認することです。

特に50歳以上の方に届く定期便には、今の加入条件で65歳まで働いた場合の「老齢年金の見込額(1年間の受取額)」が具体的に記載されています。

ハガキや封書の「老齢年金の見込額」の欄を見てください。そこに書かれている金額を「1.42倍」すれば、70歳まで繰り下げた場合の概算額を自分で計算できます。

まずはこの数字を見て、老後の生活費が足りそうかイメージすることから始めましょう。

3-2:公的年金シミュレーター(ねんきんネット)で試算する

より詳しく知りたい場合は、厚生労働省が提供している「公的年金シミュレーター」や、日本年金機構の「ねんきんネット」を活用するのがおすすめです。

スマートフォンやパソコンからアクセスでき、「何歳から受け取るか」「今の給与で働き続けたらどうなるか」といった条件を自由に変えて試算できます。

特に「働きながら受給したい」と考えている方は、在職老齢年金によるカットの有無も自動で判定してくれるため、非常に便利です。

3-3:年金事務所で相談する

「転職回数が多くて履歴が複雑」「加給年金の対象になるか確信が持てない」「過去に未納期間がある」といった事情がある方は、年金事務所の窓口で相談するのが最も確実です。

70歳からの受給手続きは、70歳の誕生月以降に「老齢年金請求書」を提出することで行います。その前の段階で、専門の職員に自分の年金記録を確認してもらい、最適な受給プランのアドバイスをもらうと安心です。

予約制のところが多いので、事前に電話で問い合わせてみましょう。

4:老後資金が不安な場合に検討したい3つの対策

受給額を確認した結果、「70歳まで待っても、思ったより増えないかも」「生活費が足りるか心配」と感じた方もいるかもしれません。

公的年金は老後の柱ですが、それだけに頼る必要はありません。今からでもできる3つの対策で、老後の資金計画を盤石にしましょう。

4-1:生活費(固定費)の見直し

収入を増やすことと同じくらい大切なのが、「出ていくお金」をコントロールすることです。

年金受給額が増えると、介護保険料などの社会保険料負担も増えるため、手取りは思ったほど増えないことがあります。

今のうちから保険、通信費、サブスクリプションなどの「固定費」を見直し、生活のサイズを少しスリムにしておきましょう。

▼固定費の節約をまとめた記事です。節約の基本が学べます。

4-2:iDeCo(個人型確定拠出年金)やNISAの活用

公的年金の不足分を補うには、自分の力で年金を作る「私的年金」の活用が効果的です。特におすすめなのが、iDeCo(イデコ)やNISA(ニーサ)といった税制優遇のある制度です。

iDeCoは65歳未満まで加入できるように制度が拡充されました。掛金が全額所得控除になるため、働いている間の税金を安くしながら、老後資金を積み立てることができます。

公的年金を70歳まで繰り下げている間の「つなぎ資金」として、これらで準備した資金を使うのも有効です。

4-3:お金のプロ「FP」へ相談する

「繰下げと加給年金、どっちが得か計算できない」「税金まで考えた手取りが知りたい」という場合は、お金の専門家であるFPに相談することをおすすめします。

FPは、個人の資産状況や家族構成に合わせて、細やかなシミュレーションを行います。客観的な数字に基づいたアドバイスをもらうことで、「自分はこうすれば大丈夫」という自信を持って老後を迎えることができるはずです。

5:まとめ

70歳からの受給開始は、最大42%の増額という大きなメリットがある一方で、「在職老齢年金によるカット」や「加給年金の消滅」といった見逃せない注意点もあります。

特に夫婦世帯や高収入の方は、単純な繰下げが必ずしも正解とは限りません。「自分はいくらもらえるのか」をねんきん定期便や公的シミュレーターで確認し、税金などの手取り額まで含めたシミュレーションを行うことが重要です。

制度の仕組みを正しく理解して、あなたにとって「一番損のない受給プラン」を選びましょう。まずは現状を把握することから始めてみてください。

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