働く主婦が社会保険に入るメリットは?扶養を外れる前に知っておきたいポイントを徹底解説

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働く主婦が社会保険に入るメリットは?扶養を外れる前に知っておきたいポイントを徹底解説
2025.10.01

働く主婦が社会保険に入るメリットは?扶養を外れる前に知っておきたいポイントを徹底解説

「パートの収入をもう少し増やしたいけど、扶養を外れると損するって本当?」

パートやアルバイトで働く多くの主婦が、このような収入と社会保険の複雑な関係に悩んでいます。手取りが減ってしまうのは避けたいけれど、将来の年金やもしもの時の保障も気になる…というのが本音ではないでしょうか。

この記事では、働く主婦が直面する「年収の壁」を解説するとともに、社会保険に加入する場合と扶養内で働き続ける場合、それぞれのメリット・デメリットを比較します。

お金の不安を解消し、自身にとってのベストな働き方を選びましょう。

この記事を書いたFP
働く主婦が社会保険に入るメリットは?扶養を外れる前に知っておきたいポイントを徹底解説
古賀 孝夫
古賀 孝夫
難しい金融の仕組みや、低金利時代の資産運用について分かりやすくお伝えします!

目次

パート・アルバイト主婦の共通の悩み「扶養」と「社会保険」どっちを選ぶべき?

パートやアルバイトで働く多くの主婦の方が「扶養」と「社会保険」の選択に頭を悩ませています。特に、働き損につながりかねない「年収の壁」の存在は大きな問題です。

「どっちを選ぶべき?」という疑問をお持ちの方は、まずはこの「年収の壁」について理解するところから始めましょう。

まずは知っておきたい「年収の壁」問題

働く主婦の方がぶつかる「年収の壁」。これは、ある年収を超えると税金や社会保険料の負担が発生し、かえって手取りが減ってしまう可能性があるラインのことです。この「壁」を正しく理解しないと、「働いたのに損してしまった…」なんてことにもなりかねません。

知っておきたい年収の3つの壁を示す図。
1つ目は『税金に関わる壁』で、所得に対して税金が課税される。
2つ目は『社会保険に関わる壁』で、社会保険料の支払いが発生する。
3つ目は『配偶者手当に関わる壁』で、パート労働者の配偶者の収入が変動する。

出典:厚生労働省「年収の壁について知ろう」

【結論】ライフプランによって最適な選択は変わる

「扶養と社会保険、どっちが良いの?」という疑問に結論からお答えすると、「最適な選択は、あなたのライフプランによって変わる」となります。

例えば、こんな考えはありませんか?

「今は子育てに集中したいから、働く時間は短くしたい」

「教育費がかかる時期だから、少しでも多く稼ぎたい」

「子育てが落ち着いたから、将来のために自分の年金を増やしたい」

働き方に求めるものは人それぞれ違います。働く時間を抑えたい方は扶養内、とにかく働きたい、将来の安心を重視したいという方は社会保険に加入するといったように、どちらにも良さがあるのです。

働く主婦なら知っておきたい社会保険の基礎知識

社会保険は、私たちの生活を守る大切なセーフティーネットです。

ここでは、働く主婦なら知っておきたい社会保険の基礎についてわかりやすく解説します。社会保険の仕組みを正しく理解し、まずは自分が加入対象になるのかをチェックしてみましょう。

そもそも社会保険ってどんな制度?

社会保険とは、ひと言でいえば「もしもの時に備えるため、国民みんなで支え合う公的な保険制度」のことです。病気やケガで働けなくなったり、将来年をとって収入がなくなったりした時に、お互いを助け合う仕組みになっています。

働く主婦に関係が深いのは、主に次の2つです。


健康保険

役割:病院にかかった時の医療費の自己負担が、原則3割で済む制度

厚生年金保険

役割:将来もらえる老齢年金に上乗せされる「2階建て」部分の年金


これらの保険料は給料から天引きされますが、実は支払う保険料の半分は会社が負担しています。 これを「労使折半(ろうしせっぱん)」といい、全額を自分で払うわけではないという点は知っておくと良いでしょう。

【2025年最新】パートの社会保険加入条件

パートやアルバイトでも、法律で定められた条件を満たすと社会保険への加入が義務付けられています。

まず、大前提として週の労働時間と月の労働日数が、どちらも同じ会社の正社員の4分の3以上ある場合は、年収にかかわらず加入対象です。

もし、この条件に当てはまらなくても、以下の条件をすべて満たす場合は社会保険に加入しなければなりません。これが、いわゆる「106万円の壁」の正体です。

社会保険加入条件のチェックリスト。

週の勤務時間が20時間以上(残業時間は含まれない)。

給与が月額88,000円以上(残業代・賞与・通勤手当は含まれない)。

2か月を超えて働く予定がある。

学生ではない(休学中、定時制、通信制の学生は加入対象となる)。

出典:厚生労働省「社会保険加入のメリットや手取りの額の変化について」

また、勤め先の従業員数は、2024年10月から「101人以上」→「51人以上」へと条件が広がりました。これにより、これまで対象外だった中小企業で働く方も加入対象になるケースが増えているので、注意が必要です。

将来への投資!働く主婦が社会保険に加入する4つのメリット

社会保険に入ると手取りが減ってしまうのは事実ですが、その一方で、お金には代えがたい大きなメリットがあることも忘れてはいけません。

目先の収入だけでなく、10年後、20年後の安心を手に入れることにもつながります。ここでは、社会保険に加入することで得られる4つの大きなメリットを見ていきましょう。

メリット1. 将来もらえる年金が増える(厚生年金)

社会保険に加入する最大のメリットは、将来受け取れる年金が手厚くなることです。

日本の公的年金は、国民全員が加入する「国民年金」と、会社員などが加入する「厚生年金」の2階建てになっています。夫の扶養に入っている場合は1階の国民年金のみですが、社会保険に加入すると、2階部分の厚生年金が上乗せされるのです。

日本の年金制度を示す図。
1階部分は国民年金(基礎年金)で、
・第1号被保険者は20歳以上60歳未満の農業者、自営業者、学生、無職の人。
・第2号被保険者は会社員や公務員。
・第3号被保険者は第2号被保険者に扶養されていて、年収130万円未満の20歳以上60歳未満の配偶者。
2階部分は厚生年金。

出典:日本年金機構「公的年金制度の種類と加入する制度」

これは、自分の力で将来の生活にゆとりを作るということ。老後の選択肢を広げるための、とても賢い投資といえるでしょう。

メリット2. 病気やケガで働けない時も安心(傷病手当金)

もし、あなたが病気やケガで長期間働けなくなってしまったら…?そんな万が一の時に、生活を力強く支えてくれるのが「傷病手当金」です。

これは、夫の扶養に入っているだけでは利用できない、社会保険加入者だけの特別な保障制度。給料がもらえない期間、収入の約3分の2が最長で1年6ヶ月間にわたって支給されます。

支給開始日の図解。
待期後に欠勤が始まると支給が開始され、支給開始日から通算して1年6か月まで支給される。欠勤と出勤を繰り返しても、欠勤の期間は支給対象になる。

出典:全国健康保険協会「病気やケガで会社を休んだとき(傷病手当金)」

【傷病手当金がもらえる条件】(すべての条件を満たすこと)

  1. 仕事以外の原因による病気やケガで療養していること
  2. 働くことができない状態であること
  3. 連続して3日間休み、4日目以降も休んでいること
  4. 休んでいる間、会社から給与が支払われていないこと

将来の年金だけでなく、今を生きるうえでのセーフティーネットが手厚くなるのも、社会保険の大きな魅力です。

メリット3. 出産時にもらえるお金が増える(出産手当金)

これから出産を考えている方にとって、見逃せないのが「出産手当金」です。これも傷病手当金と同様に、社会保険に加入している本人だけが受け取れる手当。産休中に給料が出ない場合に、生活をサポートするために支給されます。

出産手当金が支給される条件は、以下の通りです。

  • 対象範囲:出産予定日以前の42日間と出産の翌日から56日間(合計98日間)の範囲内で、仕事を休んだ日数分が対象
  • 支給額の目安:給料の約3分の2

出産前後は何かと物入りで、収入が不安定になりがちです。そんな大切な時期の家計を支えてくれる、とてもありがたい制度といえます。

メリット4. 「年収の壁」を気にせず自由に働ける

「年末が近づいてきたから、シフトを調整しないと壁を超えてしまう…」扶養内で働いていると、こんな風に勤務時間を気にしなければならないことも。

社会保険に加入すれば、こうした「年収の壁」から解放されます。

「106万円」や「130万円」といった社会保険の壁を意識する必要がなくなるため、働きたい分だけしっかり働き、収入を増やせるのです。

社会保険に加入するデメリットは「手取りが減る」こと

ここまで社会保険のメリットをお伝えしてきましたが、もちろんデメリットもあります。それは、ずばり「手取り額が減ってしまう」ことです。

手取りが減る理由はとてもシンプルで、給料から「健康保険料」と「厚生年金保険料」が天引きされるためです。夫の扶養に入っている間は自分で支払う必要がなかったため、損をした気分になるかもしれません。

では、実際にどのくらい手取りが変わるのでしょうか。簡単なシミュレーションを見てみましょう。

年収ごとの社会保険料負担と手取り年収の比較表。

年収120万円(扶養内):社会保険料負担0円、手取り年収約120万円。
年収130万円(社会保険加入):社会保険料負担約19万円、手取り年収約111万円。
年収150万円(社会保険加入):社会保険料負担約21万円、手取り年収約129万円。

表を見ると、年収130万円の時点では扶養内だった頃より手取りが減る「逆転現象」が起きています。しかし、年収150万円まで稼ぐと、保険料を払っても手取り額は扶養内で働いていた頃の年収(表の例では120万円)を上回ります。

扶養内で働くメリット・デメリットも知っておこう

社会保険に加入する働き方と比較するために、ここで改めて「扶養内で働く」ことのメリットとデメリットを整理しておきましょう。

どちらの働き方が自分に合っているかを判断するには、両方の選択肢の良い面と注意すべき面を公平に見比べることが大切です。

扶養内で働くメリット(保険料負担なし、夫の税負担減など)

扶養内で働く最大の魅力は、なんといっても目に見える金銭的な負担が少ないことです。働いた分がほぼそのまま手取り収入になるため、家計の管理がしやすいという声もよく聞きます。


【主なメリット】

  • 社会保険料の負担がゼロ
  • 夫(配偶者)の税金が安くなる
  • 会社によっては「家族手当」がもらえる場合がある

これらのメリットを最大限に活かすことで、世帯全体の手取り収入を高く保つことができます。

扶養内で働くデメリット(将来の保障が手薄、キャリアのリスクなど)

扶養内で働く場合、長期的な視点でのデメリットが存在します。これは、社会保険に加入するメリットの裏返しです。


【主なデメリット】

  • 厚生年金がないため、老後の年金額は少なくなる
  • 「傷病手当金」や出産時に受け取れる「出産手当金」がない
  • 仕事の選択肢が限られ、キャリアアップの機会を逃す可能性がある

短期的なメリットだけでなく、こうした将来にわたるデメリットもしっかりと理解しておきましょう。

まとめ

社会保険に加入することで、目先の手取り額が減ることに不安を感じる方もいるかもしれません。しかし、将来もらえる年金が増えたり、病気や出産といった万が一の時に手厚い保障を受けられたりするのが、社会保険の大きな魅力です。

どちらの働き方が「お得」かは、あなたのこれからの人生設計によって変わります。だからこそ、両方の選択肢をよく知ったうえで、ご自身にとってベストな道を選ぶことが大切なのです。

もし、「自分一人で決めるのは難しい…」と感じたら、ぜひお金のプロに相談してみてください。専門家と一緒に考えることが、後悔しない働き方を見つける一番の近道です。

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