「不動産投資をしたいけど、物件は何を基準にして選べば良いのだろう…?」
もしあなたがそんな悩みを抱えているなら、覚えておくべき本質的な答えは、たったひとつ。それは「不動産投資は、立地が9割」ということです。
物件の設備や内装はリフォームで改善できても、「立地」だけは購入後に変えることができません。つまり、あなたの資産の未来を決定づける唯一無二の要素なのです。
この記事では、なぜ立地がそれほど重要なのか、賃貸ニーズのある立地条件、そして失敗しないための具体的な調査方法を解説します。
この記事を参考にして不動産投資のリスクを回避し、立地条件の優れた物件を手に入れましょう。
なぜ不動産投資は「立地が9割」と言われるのか?3つの理由
プロの投資家は口を揃えて、不動産投資は「立地が9割」だと言います。なぜ「立地が9割」と言われるのか、そのおもな理由を見ていきましょう。
- 空室リスクを最小限に抑えるため
- 資産価値を維持・向上させるため(インカム&キャピタルゲイン)
- 金融機関からの融資評価に直結するため
理由1:空室リスクを最小限に抑えるため
不動産投資は、入居者が家賃を払ってくれて初めて成り立つ「賃貸事業」。つまり、この事業における最大のリスクは、収入が途絶える「空室」です。
どんなにデザイン性の高い部屋でも、どんなに最新の設備を導入しても、その物件が不便な場所にあれば入居者は現れません。
良い立地には時代や景気の波に左右されにくい、普遍的な「需要」が存在します。例えるなら、お店を出すときに人通りのない路地裏ではなく、常に賑わっている駅前の一等地を選ぶのと同じです。
理由2:資産価値を維持・向上させるため(インカム&キャピタルゲイン)
不動産投資の成功は、毎月の家賃収入(インカムゲイン)だけで決まるわけではありません。最終的に物件を売却した時の利益(キャピタルゲイン)まで含めた、トータルリターンで考えることが不可欠です。
ここで重要になるのが「資産価値」です。建物の価値は、残念ながら経年劣化により年々下がっていきます(減価償却)。しかし、土地の価値は、良い立地であれば価値が落ちにくく、周辺の再開発などによっては購入時よりも上昇することさえあります。
将来、物件を売却する「出口戦略」の局面で、買い手が「この立地なら欲しい」と思ってくれるかどうか。それが、不動産投資が成功だったかを決定づけるのです。
理由3:金融機関からの融資評価に直結するため
自己資金だけで不動産投資を行うケースは稀で、ほとんどの投資家は金融機関からの融資を活用します。この「融資」というスタートラインで、立地条件は重要な役割を果たします。
金融機関が融資審査で重視するのはおもに次の2点です。
- 事業の安定性:貸したお金を、家賃収入から安定して返済してくれるか?
- 担保価値:万が一返済が滞っても、物件を売却すれば回収できるか?
良い立地とは、この2つの評価基準を満たしたものを指します。また融資の可否だけでなく、金利や融資期間といった「条件面」でも有利なオファーを引き出しやすくなります。
空室率に影響する4つの立地条件
空室率に影響する立地とは、具体的に何を指すのでしょうか?ここでは、物件を評価する際に必ずチェックしておきたい4つの条件を解説します。
- 交通の利便性
- 生活の利便性
- 住環境と安全性
- ターゲット別の需要
ひとつずつ見ていきましょう。
交通の利便性
交通の利便性のポイントは次の3つです。
①最寄り駅からの距離
多くの不動産ポータルサイトでは、「駅徒歩10分以内」が人気の検索条件です。この条件を外れると、潜在的な入居者の検索結果にすら表示されず、大きな機会損失につながります。
②主要駅へのアクセス
東京なら新宿・渋谷・品川、大阪なら梅田・なんばといった地域のターミナル駅まで、乗り換えなし、または1回で30分以内に行けるかは、物件の競争力を決定づけます。
③路線の価値
JR山手線や御堂筋線のような主要路線の駅は、それだけでブランド価値があります。さらに、2つ以上の路線が利用できる駅は、交通障害時のリスクヘッジにもなり、常に安定した賃貸需要が見込めるでしょう。
入居者が毎日の生活で最も重視し、お金を払ってでも解決したいのが「時間」の悩みです。特に通勤・通学時間は、暮らしの快適さを左右する最大の要素と言えます。
生活の利便性
生活の利便性のポイントは次の3つです。
① スーパー・コンビニの有無と距離
日々の食料品や日用品の買い物環境は、生活の基盤です。単身者にとっては24時間営業のコンビニが、ファミリー層にとっては品揃え豊富なスーパーが近くにあることが重要視されます。特に、これらの店舗が「駅からの帰り道」に位置していると、利便性が高く評価される傾向です。
② 飲食店・ドラッグストアの充実度
外食派の単身者にとって、気軽に入れる飲食店が豊富にあることは大きな魅力です。また、医薬品から日用品まで幅広く揃うドラッグストアは、全世代にとって心強い存在と言えるでしょう。
③ 公共施設・金融機関・病院の有無
役所の出張所や郵便局、銀行のATMなどが徒歩圏内にあると、日々の細々とした手続きがスムーズに行えます。また、急な体調不良に備え、内科や歯科などのクリニックが近くにあるという安心感は、物件の価値を高めます。
物件の周りに何があるかは、入居者の生活満足度に直結します。「ここに住み続けたい!」と思ってもらうためには欠かせない要素です。
住環境と安全性
住環境と安全性のポイントは次の3つです。
① 周辺の治安
自治体の公表している犯罪データを確認するとともに、必ず現地で自分の目で確かめることが重要です。特に「女性が一人で夜道を歩いても不安を感じないか」という視点で、街灯の数や人通り、近隣の建物の様子などをチェックしましょう。
② 街の雰囲気と騒音
幹線道路沿いや線路沿いの物件は、騒音や振動が敬遠されます。また、居酒屋やパチンコ店などの商業施設が近すぎると、夜間の騒音が問題になることも。街の雰囲気は時間帯によって一変するため、平日と休日、昼と夜でそれぞれ現地を訪れ、環境の変化を確認するのが理想です。
③ 自然災害リスク
近年、投資判断において重要視される項目のひとつです。自治体がインターネットで公開しているハザードマップを必ず確認し、購入を検討している物件が浸水想定区域や土砂災害警戒区域に指定されていないかを調べておきましょう。
いくら便利でも、安心して暮らせない場所には誰も長く住み続けたいとは思いません。特に女性やファミリー層をターゲットにする場合、安全性と静かな住環境は絶対に妥協できないポイントです。
ターゲット別の需要
「誰にこの物件を貸すのか?」というターゲット設定も非常に重要です。これまでに挙げた3つの条件の重要度にも影響します。
①単身者・学生
単身者や学生は、自身の職場や学校へのアクセスを最優先に考えます。多少部屋が狭くても、駅や目的地への近さを重視する傾向が強いです。安価な飲食店やコンビニが近くにあることも、物件選びの重要なポイントになります。
②ファミリー
ファミリー層にとって、物件選びは子育て環境選びそのものです。希望する小中学校の学区内か、保育園に入りやすいかといった点が、駅からの距離以上に重視されることも少なくありません。子どもが安全に遊べる公園や、図書館などの公共施設が近くにあるかも重要な評価項目です。
③外国人
外国人入居者をターゲットにする場合、独自のニーズを理解する必要があります。出身国のコミュニティが形成されているエリアや、母国の食材が手に入る店、宗教施設(モスクなど)が近くにある立地は、他の物件にはない強い競争力を持ちます。
意外と賃貸ニーズのある「穴」立地3選
以下の3つは、これまでご紹介した空室率に影響する4つの立地条件に当てはまらなくても賃貸ニーズがあり、不動産投資物件として「穴」立地と言えます。
①大学の目の前の立地
学生が住みやすいため、空室率が低いことが特徴です。駅から遠くても賃貸ニーズとしてのニーズが期待できます。
②会社の近くの立地
社宅になるような物件では、社員が利用することが見込まれるため、空室率が低くなる傾向があります。こちらも、多少駅から遠くても賃貸ニーズを高く保てる傾向があります。
③墓地の近く
敬遠されがちな墓地の近くですが、意外にも賃貸物件として優秀であることも少なくありません。周辺の立地などによっては、墓が近くにある場合でも、賃貸ニーズを高く保てるケースがあります。
墓地の近くが良い理由
- 高い建物が建つ可能性が低く、日当たりや風通しが良好に保たれやすい
- 墓地で騒ぐ人はいないため、夜間静かに過ごせる
- 墓地は地盤が強い土地の可能性が高い
ただし、「③墓地の近く」に関しては、不動産鑑定評価基準の土地の価格形成において、墓地との隣接はマイナス要因(減価)として評価されるのが一般的です。価値観は人それぞれで、気にしないという人も多いですが、基本的にはマイナス評価になる点に注意が必要です。
これまでにお伝えした4つの立地条件に当てはまらなくても、周辺の環境などを確認し、賃貸ニーズが高いかどうかを確かめてみてください。
【実践編】失敗しない立地調査の具体的な方法と便利ツール
ここでは、物件購入前に実施しておきたい立地調査の具体的な方法を3つのステップで解説します。
- 机上調査(Googleマップ、路線価、人口動態、ハザードマップ)
- 現地調査(平日・休日、昼・夜の計4回歩くのが理想)
- ヒアリング調査(地元の不動産会社、住民の声)
このステップを踏むことで、不動産会社の資料だけでは見えない物件の真の価値とリスクを、あなた自身の力で見抜けるようになるはずです。
STEP1:机上調査(Googleマップ、路線価、人口動態、ハザードマップ)
現地訪問の時間と労力を無駄にしないため、まずは自宅でできる「机上調査」から始めます。無料で使えるツールを駆使し、優良候補を効率的に絞り込みましょう。
まず「Googleマップ」のストリートビューで、駅からの道のりや周辺の建物を疑似内見します。次に国税庁の「路線価図」や国交省の「地価公示」で、土地の公的な価格を調べ、資産価値を客観的に把握しましょう。
最後に、物件所在地の「自治体ホームページ」を確認します。「統計情報」から人口が増えているか(将来性)を確認し、「ハザードマップ」で洪水や土砂災害のリスク(安全性)をチェックしましょう。
これらの調査で、現地へ行く価値のある物件だけを厳選します。
STEP2:現地調査(平日・休日、昼・夜の計4回歩くのが理想)
机上調査で有望と判断したら、次は必ず現地に足を運び、データでは分からない「生きた情報」をつかみます。街の雰囲気は、平日と休日、昼と夜で全く異なるため、少なくとも4回は訪れましょう。
【現地調査チェックリスト】
- 駅からの道のり:実際に歩き、坂道や夜道の明るさを体感する
- 周辺施設の様子:スーパーの客層や品揃え、コンビニの清潔感をチェックする
- 騒音・臭い:電車の通過音、幹線道路の交通量、飲食店の排気などを五感で確認する
- 住民の雰囲気:ゴミ捨て場のマナーや歩いている人の様子から地域の民度を推測する
- 空室状況:周辺物件のポストにチラシが溜まっていないかなど、競合の状況も確認する
この一手間が、将来の空室リスクを大きく左右します。
STEP3:ヒアリング調査(地元の不動産会社、住民の声)
調査の最終段階は、現地の人々から直接情報を集める「ヒアリング」です。データと現地調査で立てた仮説を、生の声で裏付け、確信に変えましょう。
まずは「購入を検討している客」として、複数の地元の不動産会社を訪問します。「このエリアの入居者層は?」「家賃相場は?」「地域特有のリスクは?」といった質問を投げかけ、プロの情報を引き出します。一社だけの話を鵜呑みにしないことが重要です。
次に、物件近くのコンビニ店員さんや公園にいる住民の方に「この辺りの住み心地ってどうですか?」と自然に尋ねてみましょう。リアルな評判は、何より信頼できる情報源です。
まとめ
この記事で紹介した調査方法を実践すれば、不動産会社の営業トークやネットの情報に惑わされることはないはずです。ぜひ、あなた自身の力で「本当に価値のある物件」を見極めてください。
不動産は、あなたの人生を豊かにする強力な資産です。しかし、正しい知識に基づいた判断ができなければ意味がありません。もし少しでも不安や迷いがあれば、一人で抱え込まずに、経験豊富な専門家に相談することも検討してみてください。