「里子」と「養子」、どちらも子どもを家庭に迎え入れる制度です。しかし、具体的に何が違うのか、よくわからないという方もいるのではないでしょうか?
この記事では、里子と養子の「家族関係」や「制度」の違いはもちろん、「手続き」や「相続」、さらに「良い面・悪い面」までわかりやすく解説します。
里親や養子縁組を検討中の方は、ぜひこの記事を読んで里子と養子についての理解を深めてください。
里子と養子の基本的な違いとは?
里子と養子、この2つには大きく分けて「家族関係」と「制度」の違いがあります。
まずはこれらの基本的な違いについて、詳しくみていきましょう。
家族関係の違い:里子は一時的、養子は永続的
里子と養子の大きな違いは、子どもと育てる人の法的な関係です。
里親は、一時的に子どもを預かり育てる制度で、法的な親子関係はありません。つまり、子どもの親権は実の親が持ったままです。
一方、養子縁組は、法的な親子関係を結ぶ制度です。養子縁組が成立すると、戸籍上も親子となり、実の親子と同じような関係が永続的に続きます。養親が親権を持ち、子どもを扶養する義務を負うのです。

制度の違い:里親制度と養子縁組制度
里親制度と養子縁組制度には、主に次のような違いがあります。

出典:厚生労働省「里親や特別養子縁組という家族の“かたち”」
里親制度と養子縁組制度では、子どもの年齢や迎え入れる親の年齢、縁組の成立方法、関係の解消について、それぞれ異なる決まりがあります。
例えば、特別養子縁組は原則として離縁ができません。これは、特別養子縁組が、実の親子関係を解消し、新たな親子関係を構築する制度であるためです。
一方、里親制度は子どもが自立するか、実の親の元に戻るまでという期限付きの関係になっています。
里子と養子の良い面・悪い面
里子と養子、どちらの制度にも良い面と悪い面があります。
子どもの立場、里親・養親の立場、そして実親の立場。それぞれの良い面・悪い面を知ることで、より深く制度を理解できるはずです。
里子の良い面・悪い面

里親制度は、子どもの福祉を目的とした一時的な養育形態です。そのため、永続的な親子関係を望む場合には、養子縁組を検討する必要があります。
養子の良い面・悪い面

養子縁組の最大の目的は、「子どもの幸せ」です。どちらの制度を利用するか、当事者同士でよく話し合い、慎重に検討してください。
里親になるには?養子縁組をするには?条件と手続きの違いを比較
里親になるため、そして養子縁組をするための条件を下記にまとめました。

この比較表から、里親と養子縁組では親になるための条件が大きく異なることがわかります。
里親になるための手続きの流れ
それでは、里親になるための手続きの流れをみていきましょう。

里親になるには、まずお住まいの地域の児童相談所に相談し、説明会を受講します。その後、面接や研修を受け、家庭訪問調査などを実施していきます。
審査に通過をすると、里親として認定されます。状況により異なりますが、ここまでの期間はおよそ6ヶ月を目安にするとよいでしょう。
養子縁組をするための手続きの流れ
養子縁組は、普通養子縁組と特別養子縁組、それぞれ手続きの流れが異なります。
ひとつずつみていきましょう。
普通養子縁組
普通養子縁組の手続きは、以下の流れで進みます。

普通養子縁組の手続きは比較的簡潔で、当事者間の合意と市区町村役場への届け出によって行われます。
特別養子縁組
続いて、特別養子縁組の手続きの流れです。

普通養子縁組と比べてより複雑で時間がかかり(およそ1〜2年)、家庭裁判所の審判を経て、養子縁組が成立します。
里子と養子の相続はどうなる?
里子や養子、実子とでは相続の権利に違いがあるのでしょうか?
里親や養親が亡くなったとき、誰が財産を受け継ぐのか気になる方もいるかもしれません。ここでは、里子と養子、それぞれの相続に関するルールをわかりやすく解説します。
里子は里親の財産を相続できる?
里子は、原則として里親の財産を相続する権利はありません。
なぜなら、里親と里子の間には、法的な親子関係がないためです。里親が亡くなった場合、里親の財産は、里親の配偶者や実子など、法的な相続人に相続されます。
ただし、里親が遺言書を作成することで、里子に財産を遺贈することは可能です。遺言書に「里子の〇〇に、〇〇を遺贈する」といった内容を明記することで、里子に財産を残すことができるのです。
もし、里親が里子に財産を相続させたいと考えている場合は、遺言書の作成を検討しましょう。
養子は実親・養親の財産を相続できる?
養子は、普通養子縁組か特別養子縁組かによって相続関係が異なります。
【普通養子縁組の場合】
養子は、実親と養親、両方の相続人です。つまり、実親が亡くなった場合も、養親が亡くなった場合も、どちらの財産も相続する権利があります。
【特別養子縁組の場合】
養子は、養親の相続人であり、実親の相続人にはなれません。特別養子縁組は、実親との親子関係を解消し、養親と実の親子と同じ関係を築く制度です。そのため、相続関係も養親だけが実の親子の扱いになります。
養子縁組は、種類によって相続関係が大きく変わるため、注意が必要です。
里親・養子縁組で利用できる制度
里親や養子縁組を検討するうえで、経済的な支援は大きな関心事のひとつです。
ここでは、里親と特別養子縁組で利用できる経済的支援について紹介していきます。
- 里親が利用できる制度
- 特別養子縁組で利用できる制度
里親が利用できる制度
里親には、子どもの養育に必要な費用として国や自治体からさまざまな経済的支援が提供されています。

これらの支給額や助成内容は、自治体によって異なる場合があります。詳細については、お住まいの地域の児童相談所に確認してみましょう。
特別養子縁組で利用できる制度
特別養子縁組の場合、養親を対象とした助成制度を利用できる場合があります。
例えば東京都では、「養子縁組民間あっせん機関助成事業」を実施しています。これは、都内に居住する養親希望者が、民間あっせん機関に支払った手数料について、東京都がその一部を補助するものです。
【東京都の例】
対象者:東京都内に居住する養親希望者で、一定期間内(※)に縁組成立前養育を開始し、あっせん機関に対し手数料を支払った者
補助金額:1人(世帯)当たり40万円を上限とした実費
※平成31年4月1日から令和7年3月31日まで
参考:東京都福祉局「令和6年度 養子縁組民間あっせん機関助成事業(養親希望者手数料負担軽減事業)について」
特別養子縁組を検討する際は、お住まいの自治体の助成制度や民間あっせん団体の支援内容などを事前に確認することをおすすめします。
まとめ
この記事では、里子と養子の違いについて解説してきました。
それぞれの制度には、良い面も悪い面もあります。里親になること、養子縁組をすること、どちらを選ぶにしても子どもの幸せを第一に考え、慎重に検討することが大切です。
もし里親制度や養子縁組について、もっと詳しく知りたいと思われた方は、お住まいの地域の児童相談所や民間の養子縁組あっせん機関に相談してみてください。専門の相談員が、あなたの疑問や不安に寄り添い、適切なアドバイスをしてくれるはずです。