「里子」と「養子」は何が違う?制度・手続き・相続をわかりやすく解説!

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「里子」と「養子」は何が違う?制度・手続き・相続をわかりやすく解説!
2025.04.18

「里子」と「養子」は何が違う?制度・手続き・相続をわかりやすく解説!

「里子」と「養子」、どちらも子どもを家庭に迎え入れる制度です。しかし、具体的に何が違うのか、よくわからないという方もいるのではないでしょうか?

この記事では、里子と養子の「家族関係」や「制度」の違いはもちろん、「手続き」や「相続」、さらに「良い面・悪い面」までわかりやすく解説します。

里親や養子縁組を検討中の方は、ぜひこの記事を読んで里子と養子についての理解を深めてください。

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「里子」と「養子」は何が違う?制度・手続き・相続をわかりやすく解説!
髙山 菊江
髙山 菊江
大切な人を突然亡くした経験を通して、人生で起こる悲しみや痛みに寄り添い、いのちの尊さを知り人生を歩んでいく為のサポートをしていきます。

目次

里子と養子の基本的な違いとは?

里子と養子、この2つには大きく分けて「家族関係」と「制度」の違いがあります。

まずはこれらの基本的な違いについて、詳しくみていきましょう。

家族関係の違い:里子は一時的、養子は永続的

里子と養子の大きな違いは、子どもと育てる人の法的な関係です。

里親は、一時的に子どもを預かり育てる制度で、法的な親子関係はありませんつまり、子どもの親権は実の親が持ったままです。

一方、養子縁組は、法的な親子関係を結ぶ制度です。養子縁組が成立すると、戸籍上も親子となり、実の親子と同じような関係が永続的に続きます。養親が親権を持ち、子どもを扶養する義務を負うのです。

養子縁組と里親の種類の違いをまとめた画像
養子縁組には、実親との親子関係を継続したまま、新たな八子関係を法的に結ぶ普通養子縁組と、実子との親子関係を消滅して新たに養親と法的な親子関係を結ぶ特別養子縁組がある。
里親には5つの種類がある。
養育里親:さまざまな事業により、家庭で暮らせないこと子どもを一定期間自分の家庭で養育する
専門里親;虐待・非行・障害などの理由により、子どもに専門的なケアが必要な際の里親
養子縁組里親;特別養子縁組を前提として、子どもを預かる里親
親族里親;さまざまな事情により両親が養育できない際に、3東進までの親戚が子どもを養育する里親
週末・季節里親;週末や夏休みなどに家庭に迎えて、家庭での経験をともにする里親

制度の違い:里親制度と養子縁組制度

里親制度と養子縁組制度には、主に次のような違いがあります。

「里親と特別養子縁組の違い」を示す比較表。特別養子縁組、普通養子縁組、里親制度の3つの制度を、「戸籍の表記」「子どもの年齢」「迎え入れる親の年齢」「縁組の成立」「関係の解消(離縁)」の5つの項目で比較しています。

特別養子縁組: 戸籍上は「長男(長女)」、子は原則15歳未満、親は原則25歳以上の夫婦、家庭裁判所が決定、離縁は原則認められない。
普通養子縁組: 戸籍上は「養子(養女)」、子の年齢制限なし(ただし親より年下)、親は20歳以上、実親と子の同意(15歳以上は本人の意思)で成立、離縁は認められる。
里親制度: 戸籍の表記に変更なし、子は原則18歳まで、親の年齢制限なし、児童相談所からの委託で成立、関係解消は子の自立または実親の元へ戻る場合。

出典:厚生労働省「里親や特別養子縁組という家族の“かたち”」

里親制度と養子縁組制度では、子どもの年齢や迎え入れる親の年齢、縁組の成立方法、関係の解消について、それぞれ異なる決まりがあります。

例えば、特別養子縁組は原則として離縁ができません。これは、特別養子縁組が、実の親子関係を解消し、新たな親子関係を構築する制度であるためです。

一方、里親制度は子どもが自立するか、実の親の元に戻るまでという期限付きの関係になっています。

里子と養子の良い面・悪い面

里子と養子、どちらの制度にも良い面と悪い面があります。

子どもの立場、里親・養親の立場、そして実親の立場。それぞれの良い面・悪い面を知ることで、より深く制度を理解できるはずです。

里子の良い面・悪い面

「里子の良い面・悪い面」をまとめた図。子ども、里親、実親それぞれの視点から、良い面(メリット)と悪い面(デメリット)を箇条書きで説明しています。

【里子の良い面】

子どもにとって: 実親と暮らせない子どもに温かい家庭環境を提供できる。
里親にとって: 子どもの成長支援による社会貢献や、やりがいを感じられる。
実親にとって: 安心して子どもを預けられ、子どもの成長を見守ることができる。
【里子の悪い面】

子どもにとって: 里親との関係が一時的であるため、不安定な気持ちになることがある。
里親にとって: 子どもとの別れが辛い経験になることや、養育には時間的・精神的な負担が伴う。
実親にとって: 子どもと離れて暮らすことへの葛藤や、里親との関係構築に悩むことがある。

里親制度は、子どもの福祉を目的とした一時的な養育形態です。そのため、永続的な親子関係を望む場合には、養子縁組を検討する必要があります。

養子の良い面・悪い面

「養子の良い面・悪い面」をまとめた図。子ども、養親、実親それぞれの視点から、良い面(メリット)と悪い面(デメリット)を箇条書きで説明しています。

【養子の良い面】

子どもにとって: 法的な親子関係を結び、永続的な家族の一員として迎えられる。実子と同じ権利(相続権など)を得られる。
養親にとって: 実子と同じように子どもを育てられる。法的な親子関係に基づく安心感を得られる。
実親にとって: 子どもがより良い環境で育つことを願える。
【養子の悪い面】

子どもにとって: 養子に出されたという事実が、心理的な負担になることがある。
養親にとって: 養子縁組の手続きが複雑な場合がある。
実親にとって: 子どもとの法的な親子関係が解消されるため、葛藤を抱える。

養子縁組の最大の目的は、「子どもの幸せ」です。どちらの制度を利用するか、当事者同士でよく話し合い、慎重に検討してください。

里親になるには?養子縁組をするには?条件と手続きの違いを比較

里親になるため、そして養子縁組をするための条件を下記にまとめました。

「里親、普通養子縁組、特別養子縁組」の制度を比較する表。(※画像タイトルは「養子の良い面・悪い面」となっていますが、内容は制度比較です。)

以下の項目で3つの制度を比較しています。

結婚:
里親: 独身でも可能
普通養子縁組: 独身でも可能
特別養子縁組: 結婚しており配偶者あり
親の年齢:
里親: 25歳以上
普通養子縁組: 20歳以上
特別養子縁組: 25歳以上(配偶者は20歳以上でも可能)
子どもの年齢:
里親: 0~18歳未満
普通養子縁組: 養親の年齢よりも下であること
特別養子縁組: 0~15歳未満
その他:
里親: 自治体ごとに条件あり。経済面、家族の同意と協力が必要。
普通養子縁組: 未成年者(18歳未満)を養子にする場合、家庭裁判所の許可(審判)が必要。
特別養子縁組: 経済状況、婚姻年数、生育歴など団体によって条件あり。

ソースと関連コンテンツ

この比較表から、里親と養子縁組では親になるための条件が大きく異なることがわかります。

里親になるための手続きの流れ

それでは、里親になるための手続きの流れをみていきましょう。

里親になるための流れをまとめた図。
【里親になるための流れ】

里親になるには、まずお住まいの地域の児童相談所に相談し、説明会を受講します。その後、面接や研修を受け、家庭訪問調査などを実施していきます。

審査に通過をすると、里親として認定されます。状況により異なりますが、ここまでの期間はおよそ6ヶ月を目安にするとよいでしょう。

養子縁組をするための手続きの流れ

養子縁組は、普通養子縁組と特別養子縁組、それぞれ手続きの流れが異なります。

ひとつずつみていきましょう。

普通養子縁組

普通養子縁組の手続きは、以下の流れで進みます。

「里親になるための流れ」を示すフローチャート。以下の8つのステップが順番に示されています。

説明会受講
面接
研修
里親希望申請
家庭訪問
審議
里親認定
認定

ソースと関連コンテンツ

普通養子縁組の手続きは比較的簡潔で、当事者間の合意と市区町村役場への届け出によって行われます。

特別養子縁組

続いて、特別養子縁組の手続きの流れです。

「特別養子縁組の手続きの流れ」を示すフローチャート。以下の6つのステップで構成されています。

養親による申立て: 養親となる人が家庭裁判所に申し立てます。
家庭裁判所による調査: 家庭裁判所が調査を行います。
特別養子適格の確認の審判: 実親による養育状況、実親の同意の有無、年齢要件などを確認し、子どもが特別養子縁組の対象として適格かどうかの審判が行われます。
6ヶ月以上の監護期間: 養親となる人が子どもを6ヶ月以上監護(試験養育)します。
特別養子縁組成立の審判: 養親となる者の適格性や、子どもとのマッチング状況などを確認し、特別養子縁組を成立させるかどうかの審判が行われます。この審判により特別養子縁組が成立します。
特別養子縁組の届出: 審判確定後、市区町村役場に特別養子縁組の届出を行います。

普通養子縁組と比べてより複雑で時間がかかり(およそ1〜2年)、家庭裁判所の審判を経て、養子縁組が成立します。

里子と養子の相続はどうなる?

里子や養子、実子とでは相続の権利に違いがあるのでしょうか?

里親や養親が亡くなったとき、誰が財産を受け継ぐのか気になる方もいるかもしれません。ここでは、里子と養子、それぞれの相続に関するルールをわかりやすく解説します。

里子は里親の財産を相続できる?

里子は、原則として里親の財産を相続する権利はありません。

なぜなら、里親と里子の間には、法的な親子関係がないためです。里親が亡くなった場合、里親の財産は、里親の配偶者や実子など、法的な相続人に相続されます。

ただし、里親が遺言書を作成することで、里子に財産を遺贈することは可能です。遺言書に「里子の〇〇に、〇〇を遺贈する」といった内容を明記することで、里子に財産を残すことができるのです。

もし、里親が里子に財産を相続させたいと考えている場合は、遺言書の作成を検討しましょう。

養子は実親・養親の財産を相続できる?

養子は、普通養子縁組か特別養子縁組かによって相続関係が異なります。


【普通養子縁組の場合】

養子は、実親と養親、両方の相続人です。つまり、実親が亡くなった場合も、養親が亡くなった場合も、どちらの財産も相続する権利があります。


【特別養子縁組の場合】

養子は、養親の相続人であり、実親の相続人にはなれません。特別養子縁組は、実親との親子関係を解消し、養親と実の親子と同じ関係を築く制度です。そのため、相続関係も養親だけが実の親子の扱いになります。


養子縁組は、種類によって相続関係が大きく変わるため、注意が必要です。

里親・養子縁組で利用できる制度

里親や養子縁組を検討するうえで、経済的な支援は大きな関心事のひとつです。

ここでは、里親と特別養子縁組で利用できる経済的支援について紹介していきます。

  • 里親が利用できる制度
  • 特別養子縁組で利用できる制度

里親が利用できる制度

里親には、子どもの養育に必要な費用として国や自治体からさまざまな経済的支援が提供されています。

「里親に支給される手当等」に関する説明図(令和4年度単価)。

支給内容は以下の3つに分類されています。

里親手当(月額):

養育里親: 90,000円(2人目以降も同額)
専門里親: 141,000円(2人目以降も同額)
※令和2年度から2人目以降の手当額が増額されました。
一般生活費:

食費、被服費等。
1人当たり月額: 乳児 60,390円、乳児以外 52,370円。
その他:

幼稚園費、教育費、入学支度金、就職支度費、大学進学等支度費、医療費、通院費など、必要に応じて支給される費用。
※図上部には「※里親数・児童数は福祉行政報告例(令和3年3月末現在)」との注記があります。

出典:厚生労働省「里親制度(資料集)」

これらの支給額や助成内容は、自治体によって異なる場合があります。詳細については、お住まいの地域の児童相談所に確認してみましょう。

特別養子縁組で利用できる制度

特別養子縁組の場合、養親を対象とした助成制度を利用できる場合があります。

例えば東京都では、「養子縁組民間あっせん機関助成事業」を実施しています。これは、都内に居住する養親希望者が、民間あっせん機関に支払った手数料について、東京都がその一部を補助するものです。


【東京都の例】

対象者:東京都内に居住する養親希望者で、一定期間内(※)に縁組成立前養育を開始し、あっせん機関に対し手数料を支払った者

補助金額:1人(世帯)当たり40万円を上限とした実費

※平成31年4月1日から令和7年3月31日まで

参考:東京都福祉局「令和6年度 養子縁組民間あっせん機関助成事業(養親希望者手数料負担軽減事業)について」


特別養子縁組を検討する際は、お住まいの自治体の助成制度や民間あっせん団体の支援内容などを事前に確認することをおすすめします。

まとめ

この記事では、里子と養子の違いについて解説してきました。

それぞれの制度には、良い面も悪い面もあります。里親になること、養子縁組をすること、どちらを選ぶにしても子どもの幸せを第一に考え、慎重に検討することが大切です。

もし里親制度や養子縁組について、もっと詳しく知りたいと思われた方は、お住まいの地域の児童相談所や民間の養子縁組あっせん機関に相談してみてください。専門の相談員が、あなたの疑問や不安に寄り添い、適切なアドバイスをしてくれるはずです。

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大切な人を突然亡くした経験を通して、人生で起こる悲しみや痛みに寄り添い、いのちの尊さを知り人生を歩んでいく為のサポートをしていきます。
NPO法人ライフバトン、コーディネーター 思いがけない妊娠に対するSOS相談、妊産婦さん向けシェルターの用意、過去に中絶を経験した方へのグリーフケアカウンセリング等を行っています。 【参考リンク】NPO法人ライフバトン

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